こんにちわ、ちぷるそです。
2016年からマイナンバーカードの交付が始まって9年が経ちました。
マイナンバーカード普及率は76%(2025/2/1時点)まで伸びています。
現時点の普及率はデジタル庁のサイトに掲載されていますので参考まで。
マイナンバーの考え方はオーストリア電子政府などの諸外国の共通番号の仕組みをベースにしています。
仕組み上は大きく変わらないのになぜ普及率や利活用が進んでいないか、そこにはマーケティング戦略の違いがあるのではないかと考えています。
この記事では、マイナンバーを国民が利用するにあたり最も利用されると想定していたであろう「マイナポータル」を中心に、
マイナポータルで何ができるのか、マイナポータルはなぜ使いにくいのか、について述べたいと思います。
この記事でわかること
- マイナポータルとは
- マイナポータルで、できることとできないこと
- マイナポータルは今後どう発展するのか
マイナポータルとは
Googleでマイナポータルと検索すると、「ホーム | マイナポータル」がヒットします。

マイナポータルとは行政手続きをワンストップで行うように手助けするものです。

以前は、「最高レベルのセキュリティで安心して使える」といった記載があったのですが、無くなっています。
説明が抽象的なので具体的にどようなことができるか、実際にみていきましょう。
マイナポータル できること、できないこと
+ 必要な行政手続きを「さがす」こと
マイナポータルは行政機関とのインターフェースを持っており、必要な手続きを検索することができます。
- 市区町村を選択して
- サービスカテゴリを選択する
わずか2Stepで、行政手続きの候補が参照できます。

行政サービスの知見がなくても、知ることができる。これは便利ですね。
– 原本提出や非対象自治体も多く、自分の市町村がサービス対応しているか分からない
以前に比べると、原本提出が必要な書類も減ってきていますが、いまだに原本提出が必要なものは多いです。
そのため、マイナポータルでサービスがあったから自宅から手続きができると思っても、実際には必要書類を集めるために役場に行かないといけない
という場面は多くあります。
また、マイナポータルとして機能は備わっているけど、あなたの市町村では対象外です。といった手続もあります。
自身の市区町村がオンライン手続き対象なのか対象外なのかは調べてみないとわかりません。
これは使いにくいと言われるポイントかと思います。
+ 自分の情報(自己情報)や自分宛のお知らせ(お知らせ)を確認できる
自己情報
これはポストのような機能です。
以下のような情報がマイナポータルを通して取得できます。
- 健康・医療
- 税・所得・口座情報
- 年金関係
- 子ども・子育て
- 世帯・戸籍情報
- 福祉・介護
- 雇用保険・労災
詳しくは「特定個人情報等の項目一覧」を確認してください。
お知らせ
また、お知らせと言い、行政機関等とつながることで、個人宛のお知らせを受信することができます。
お知らせの送付元は以下のような機関があります。
- 市区町村
- e-Tax(国税庁)
- ねんきんネット(日本年金機構)
- e-私書箱(野村総合研究所)
- MyPost(日本郵便)
- 民間送達・e-Tax連携サービス(シフトセブンコンサルティング)
お知らせ送付元が増えれば、個人個人にカスタマイズされたお知らせをプッシュ通知できるので便利ですよね。
– しかし、取得した情報は見にくい
実際に「わたしの情報」というサービスを利用し、児童手当の情報を取得してみました。
一部を抜粋して表示します。

項目名のみ抜粋しましたが、実は1ページ分しか抜粋していません。
実はこの後も同じ項目が繰り返されており、10ページ以上続くのです。
機能は十分なんだけれども、使い勝手はまだまだ改善の余地がありそうですね。
– しかし、カードリーダーが別途必要
実際に日本年金機構のねんきんネットに繋げてみましょう。

これ、何が起きているか分かりにくいので説明します。
マイナポータルからねんきんネットに繋げようとしています。
マイナポータルはPCからログインする際にスマートフォンのカードリーダー機能でログインできるため、PCに繋げて使用するカードリーダーは不要です。
ねんきんネットはPCからログインする際にスマートフォンのカードリーダー機能は使用できないため、PCに繋げて使用するカードリーダーが必要なんです。
ねんきんネットを単体で使う場合はスマートフォンのカードリーダー機能でログインできるため、機能としてはあるんです。
つまり、マイナポータルもねんきんネットもPCからマイナンバーカードでログインする機能、スマートフォンからマイナンバーカードでログインする機能は備えているものの、マイナポータルからねんきんネットに接続する際にはカードリーダーが別途必要ということです。
マイナポータルが不便と言われるところ
マイナポータルでできることを見てきましたが、便利なところと不便なところがイメージできたかと思います。
マイナポータルやマイナポータルに接続する機関の設計者から見ると、
- 必要な機能は備えている
と言うと、確かにその通りです。
国民から見ると、「使いにくい」となります。理由は、
- 取得した情報が見にくい。。
- スマートフォンでログインできると思ったのに、カードリーダーがいるのか。。。
- 便利そうに見えるけど、何ができるのかよくわからない。。。
確かにその通りです。
マイナポータルがなぜ分かりにくいのか
結論、マイナポータルは使い勝手が良くないです。
なぜこうなっているのかというと、マイナポータルが1つのシステム、1つの機関で完結しないからです。
例えば、「わたしの情報」を取得する場合、情報の保有機関に情報を取得する必要があります。
機関毎にフォーマットや保存形式が異なれば、取得した情報の見方も異なります。
マイナポータルの設計時に行政サービスに詳しい人がいて、表示のさせ方を作り込んでいればこのようなことにはならなかったでしょう。
また、マイナポータルは外部ウェブサイトと繋げることでサービスを拡大します。
ここで言う外部サービスには、既に情報が洗練されている機関もありますが、多くの機関は情報が体系的に管理されていなかった機関です。そのため、外部サービスと連携するたびにデータフォーマットを適切に設計する必要が出てきます。しかし、直近の動きでサービス稼働を先行する場合は、取得した情報をそのまま表示する機能からリリースすることになりかねません。そうすると、また分かりにくいと言う評判を得ることになります。
分かりにくさを総括すると、
サービス設計時にデザイン思考のようなユーザー導線を考えていなかったのではないかと思います。
サービス設計時にユーザー導線を捉えた上で、「この便利な機能が使えます!」とマーケティング的に謳い、国民が便利と感じていれば普及率は違っていたはずです。
しかし、デザイン思考やマーケティング戦略が不足しており、リリースされている機能を使ってみたら使い勝手が悪かった、と言う評判が先行した結果、普及率が停滞していたのではないでしょうか。
マイナポータルは今後どう発展するのか
国民の「利便性が悪い」と言う声に対し、ユーザーインターフェースの改善で対処しようとしているように見受けられます。「デジタル庁 – マイナポータルのデザインをリニューアル〜」
確かに必要な改善ですが、選択と集中で「マイナポータルがないといけない」レベルのサービスを作るべきです。今は全体的に便利になりつつあるフェーズですがマイナンバーカードを受け取っていない過半数の国民が取得したくなるようなサービスはリリースされていません。
また、外部機関とサービス連携する際は、国民の一連の流れをデザイン思考で設計するべきです。この設計の難しさは主体が誰なのかと言うところにあります。
マイナポータルの設計者が主体なのか、外部機関が主体となるのか、と言う部分です。
マイナポータルは国ですが、外部機関は多岐にわたります。
マイナポータルの改善は当然として、外部機関側で追加設計すべき機能も発生します。ここをマイナポータル側が主体となって改善することで、利便性の高いマイナポータルが実現できると考えています。
以上、主観でした。