【2026年版】個別株・ETFの長期投資スクリーニング完全ガイド|ユニバース設定・定量定性チェック・ポートフォリオ設計まで8ステップで解説

📅 最終更新

2026年3月時点の情報をもとに作成しています。本記事は投資手法の紹介であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

「スクリーニングの方法は調べたけど、実際の手順がバラバラで続かない」——個別株投資に挑んでも、途中で手が止まってしまう経験はないでしょうか。本記事では、長期投資向けの”再現性ある”スクリーニング型を、今日から使える実務フローに落とし込みます。

複雑な理論より「明日も続けられる型」を重視し、以下の8ステップで手戻りなく進められるよう設計しました。

  • 🔍 STEP1〜2:投資ユニバースの決め方・一次情報の読み方
  • 📊 STEP3〜4:定量スクリーニング(第一次ふるい)・定性チェック(第二次ふるい)
  • 🛡️ STEP5〜6:リスク洗い出しと撤退条件・候補の絞り込み
  • 📈 STEP7〜8:バックテストと妥当性確認・買い方・ポートフォリオ設計

対象読者は、インデックス積立を継続しつつ、個別株・ETFでも超過リターンを狙いたい中級者。忙しくても四半期ごとに見直せる運用を求める方に向けて書いています。

評価軸の数 6軸100点 収益性・成長性・健全性・バリュエ・競争優位・資本配分
スクリーニング段数 2段階 定量(第一次)→定性(第二次)
定期見直し頻度 四半期ごと 本点検2〜3時間・月次は30分
目標銘柄数 10〜12銘柄 A/B/Cリストで管理

目次

本記事の前提と評価軸の全体像

運用の前提(長期=3〜5年以上・積立前提)

⏳ 投資期間

3〜5年以上を基準。短期イベントはノイズ扱い。

💰 資金配分

コア=インデックス(NISA等)継続、サテライト枠で個別株を積み上げ。

🚪 売買ルール

「仮説が壊れたら撤退」を明文化。上がったから売る/下がったから買うはしない。

🔄 レビュー頻度

基本は四半期決算ごと。緊急の悪材料のみ臨時点検。

評価軸の全体像(6軸・重み付きスコア)

評価軸重み主な指標
収益性25%営業利益率、ROE、ROIC。過去3年の水準と安定度
成長性20%売上・営業益CAGR、ガイダンス達成力(過去実績)
財務健全性15%自己資本比率、有利子負債、インタレストカバレッジ
バリュエーション15%PER/PBR/EV/EBITDAの整合。割安”風”ではなく文脈で判断
競争優位15%参入障壁、スイッチングコスト、ネットワーク効果、価格決定力
資本配分10%成長投資>自社買い>配当のバランス。IRの一貫性

STEP 1|投資ユニバースを決める

「まず何を母集団にするか」で、その後の精度と手間がほぼ決まります。広げすぎず、でも偏りすぎない範囲を先に固定しましょう。

国・市場・時価総額レンジ

🇯🇵 日本株の基準
  • 市場:東証プライム/スタンダード中心(グロースは追える範囲で追加)
  • 時価総額:300億〜2兆円
  • 流動性:3カ月平均売買代金 ≥ 1億円
  • 株価:≥ 200円
🇺🇸 米国株の基準
  • 市場:NYSE/NASDAQ(S&P500/Russell 1000採用銘柄を基本)
  • 時価総額:$0.5B〜$50B(Small〜Mid中心)
  • 流動性:3カ月平均(出来高×株価) ≥ $1M/日
  • 株価:≥ $5

💡 まずは「国1つ × 市場1〜2つ × 時価総額レンジ × 流動性」の4点で母集団を固定。両国を同時にやると管理が倍増します。

除外条件(低流動性・監理整理・極端な赤字など)

🚫 最初に決めておく”触らないライン”
売買のしづらさ
株価 < 200円(日本)/ $5未満(米国)の低位株。板が薄くスプレッドが常時大きい銘柄
上場区分
監理・整理銘柄、Going Concern注記(継続企業の前提に重大な疑義)あり
財務の赤信号
直近2〜3期連続の営業赤字、債務超過、インタレストカバレッジ < 1倍継続、希薄化(大型SO/CB乱発)が常態化
情報の非対称性
海外小型・新興で一次情報が乏しい。訴訟・規制リスクが突出(FDA承認待ち一点張りなど)

📋 コピペOK:初期フィルタ雛形
日本株:東証プライム/スタンダード、時価総額300億〜2兆円、3カ月平均売買代金 ≥ 1億円、株価 ≥ 200円、監理・整理除外、連続営業赤字2期除外、債務超過除外
米国株:NYSE/NASDAQ、時価総額 $0.5B〜$50B、3カ月平均(出来高×株価)≥ $1M/日、株価 ≥ $5、Going Concern注記除外、連続営業赤字2期除外

STEP 2|一次情報の取りに行き方

スクリーニングの精度は「まず一次情報」で決まります。ニュースや二次記事は補助。決算書とIR資料だけで判断できる体力をつけましょう。

必読ドキュメント(有報・決算短信・決算説明会資料)

📄 有価証券報告書(有報)

年1回の”全身検査”。会計方針・KPI・リスク・ガバナンスまで網羅。

抜き出すもの:
  • セグメント定義とKPI
  • 収益認識の方針
  • 重要なリスクと対応
  • 役員構成と株主還元方針
📊 決算短信(四半期)

最新の”血圧測定”。YoY/QoQ・通期見通しの修正・セグメントの変化に注目。

抜き出すもの:
  • 売上・営業益のYoY/QoQ
  • ガイダンスの修正理由
  • セグメント別の増減要因
  • 受注・バックログの推移
🎤 決算説明会資料・Q&A

経営者の”考え”が出る場所。価格決定力と需要の質を言葉の温度で読む。

抜き出すもの:
  • 価格改定の有無と継続性
  • 粗利率の見通し
  • 重点投資領域(人員・CAPEX)
  • Q&Aでの”弱点認識”

どこを読むか(サマリ→セグメント→リスク→CF)

5〜10分の高速ルーチンで仮説を立て、深掘りが必要かを判定します。

1
サマリ——通期見通しの上方/据置/下方とその理由(価格/数量/為替/コスト)。粗利率・営業利益率が悪化なら深掘りフラグ。
2
セグメント——価格×数量×ミックス×為替で分解。KPI(ARPU・MAU・稼働率・チャーン・LTV/CAC)の方向性と一貫性を確認。
3
リスク——どの指標が動いたら仮説が壊れるかを言語化。規制・価格競争・サプライ制約・為替の反証条件をメモ。継続企業の前提の注記確認。
4
キャッシュフロー——営業CFが利益と歩調を合わせて増えているか。在庫・売掛・買掛の運転資本に逆回転がないか。投資CF・財務CF(自己株買い・配当)の資本配分の整合性。

☑ 一次情報チェックリスト
  • □ ガイダンス:上振れ/下振れの根拠は数量?価格?コスト?為替?
  • □ 粗利率:構造的か一時的か。改善/悪化の持続性は?
  • □ セグメント:KPIが結果→原因の順で説明されているか
  • □ リスク:数値化した反証条件を1行で(例:解約率>3%で仮説撤回)
  • □ CF:営業CFと利益の乖離、在庫の積み上がり、過度な希薄化の兆候なし
  • □ 資本配分:成長投資→超過資金で自己株買い→残余で配当の優先順位が明確

STEP 3|定量スクリーニング(第一次ふるい)

一次情報から抜いた数字を同一基準で機械的にふるいます。感情を入れず「落とすための基準」を明確化します。

収益性:営業利益率 / ROE / ROICのしきい値

指標目安補足
営業利益率(OPM)製造業≥10% / ソフト≥20% / 小売≥5%悪化トレンドが2四半期連続なら要注意(構造要因の可能性)
ROE≥ 12%資本効率の最低ライン。自己株買いによる嵩上げは注釈確認
ROIC(税後)WACC + 3pt以上ROIC > ROEが長期で続く企業はレバレッジ依存が低く質が高い

成長性:売上・営業益CAGR、ガイダンスの整合

指標目安補足
売上CAGR(3年)≥ 8〜10%(成熟業種≥5%)
営業利益CAGR(3年)≥ 12%売上成長を上回るのが理想(利益率改善の裏付け)
ガイダンス達成率過去4期中3期以上未達理由が外部要因→内部改善に繋がったかも確認

財務健全性とバリュエーション

🛡️ 財務健全性の基準
  • 自己資本比率:≥ 30%(資産重い業種は25%でも可)
  • Net Debt/EBITDA:≤ 2.0倍(M&A期は≤ 3.0倍+返済計画明確)
  • インタレストカバレッジ:≥ 5倍(< 1倍は原則除外)
  • 希薄化リスク:増資・CB・SOの継続発行は減点
💹 バリュエーションの使い分け
  • PER:成長株はPEG ≈ 1前後を許容ライン
  • PBR:ROE > 資本コストを満たすかが先。1倍割れは収益性回復の根拠が条件
  • EV/EBITDA:8〜12倍を中立帯。同セクター・同マージン帯で比較
  • FCF利回り:≥ 5%で魅力度あり

📋 コピペOK:第一次フィルタ(数値版)
収益性:OPM ≥10%(小売≥5%)、ROE ≥12%、ROIC ≥WACC+3pt
成長性:売上CAGR(3y) ≥8%、営利CAGR(3y) ≥12%、ガイダンス達成 ≥3/4期
健全性:自己資本比率 ≥30%、Net Debt/EBITDA ≤2.0x、IC Ratio ≥5x
バリュエ:EV/EBITDA 8〜12x(業種補正)、PEG ≈1、FCF利回り ≥5%

STEP 4|定性チェック(第二次ふるい)

第一次で数値は合格。でも「何で稼ぎ、どこが強いか」が曖昧なら長期では持てません。勝ち筋の質を見抜き、A/B/Cに振り分けます。

競争優位(参入障壁・スイッチングコスト・ネットワーク効果)

🏰 参入障壁

規模の経済、規制・認可、特許・独自データ、供給網の専有性。

代理指標:

粗利率の一貫性、値下げ競争の有無、シェアの安定

🔒 スイッチングコスト

業務フローへの組み込み、周辺システムとの連携、データ移行の面倒さ。

代理指標:

解約率(チャーン)低水準、契約期間の長さ

🌐 ネットワーク効果

ユーザーが増えるほど価値が高まる(マーケットプレイス・決済・SaaSエコシステム等)。

代理指標:

NRR > 100%、補完アプリ数、売り手・買い手の同時成長

A候補の条件:粗利率の維持 + 低チャーン + NRR > 100% の3点が揃えば最有力。

収益ドライバー(価格決定力・LTV/CAC・アップセル余地)

ドライバー確認ポイント代理指標
価格決定力値上げ後の数量維持/粗利率改善が確認できるか。値上げ理由がコスト転嫁でなく価値向上かARPU↑×数量≧横ばい、値引き率縮小
LTV / CACLTV/CAC ≥ 3、回収期間 < 12ヶ月(SaaS等)。非SaaSはリピート率・同店売上で代替リピート率、稼働率、同店売上
アップセル余地Good/Better/Best構成、モジュール追加、クロスセルの自然な導線が資料に明示されているかエクスパンション売上比率↑、NRR↑、上位プラン移行率↑

クイックスコア(各5点・合計15点)→ A/B/Cへ仕分け

A
12〜15点

即行動ゾーン。価格条件合致でIN・増やす。

B
9〜11点

監視強化。価格/材料待ち。価格アラート設定。

C
〜8点

保留/除外。改善条件を明文化し、満たすまで触れない。

🚩 レッドフラグ(見つけたらB以下へ)
  • 値上げ後に数量急減/チャーン悪化
  • 一発屋の特需依存(更新されない成長)
  • 連続のれん減損、希薄化を伴う調達常習
  • 重要KPIの開示中止・定義変更(不利なトレンド隠しの可能性)
  • 継続的な希薄化(増資・SO・CB乱発)

STEP 5|リスク洗い出しと”何が壊れたら撤退か”を明文化する

「保有の理由」が崩れた瞬間を事前に言語化しておくと、迷いなく動けます。前提→反証条件→トリガーの順で整理します。

業績ドライバーの前提と反証条件

✍️ 前提の書き方(1行で)

例:「値上げ定着で粗利率+150bps、NRR>105%が続く」

→ 反証条件(壊れたサイン):
  • 粗利率が2四半期連続で −150bps
  • NRR < 100%に低下 / 解約率の上振れ
  • 価格改定後に数量 ▲5%以上の縮小が継続

リスク別・撤退トリガー一覧

リスク区分反証条件(数値+期間)
財務・CF営業CF < 純利益が2期連続 / Net Debt/EBITDA > 3.0xへ急上昇 / ICR < 3x
ガバナンス重要KPIの開示中止・定義変更 / 継続企業の疑義注記 / 希薄化 > 5%の連発
規制リスク規制変更で売上の◯%影響と会社が明言 / 承認時期の再延期
為替想定レート乖離で営業益 ▲◯%超の下方修正(感応度を開示メモ化)
コモディティ主要原料の価格YoY+◯%継続 + 価格転嫁率 < 70%

⚠️ ポイント:トリガーは「数値+期間」で固定。感情を入れず、シートに従って実行します。

STEP 6|候補絞り込みの実務フロー(スコアリング+A/B/C管理)

数を”磨り減らす”工程です。可視化→点数化→A/B/Cへ仕分けの3ステップで迷いを減らします。

スコアリング表の作り方

採点ルール:A=5 / B=4 / C=3 / D=2 / E=1 の5段階評価 → 重みを掛けて合計(100点満点)

銘柄収益性(25)成長性(20)健全性(15)バリュエ(15)競争優位(15)資本配分(10)合計判定
銘柄A2516121312886A
銘柄B201413119774B
銘柄C181210108664C

A/B/Cリスト運用と見直し頻度

🗓️ 月次の軽点検(30分)
  • 価格と出来高だけ確認。目標レンジに入ったらA昇格審査
  • ニュースは”トリガー該当のみ”拾う(定例は読まない)
📊 四半期の本点検(2〜3時間)
  • 決算反映:スコア更新(粗利率・ガイダンス・CF・KPI)
  • B→A:ガイダンス上方修正 or 目標倍数に回帰
  • A→B/C:撤退トリガーに触れた/重要KPIの悪化継続
  • 1銘柄上限10%、A合計≤70%、B最大3%試し玉

STEP 7|バックテストと妥当性確認(任意)

机上の理想を過去の地合いに突っ込んで、勝ち筋と弱点(ドローダウン)を把握します。凝りすぎず、簡素+再現可能が正義です。

過去データでの検証方法

📋 検証の前提(固定してから回す)
  • 期間:強気局面・弱気局面・もち合いを最低1回ずつ含む(例:過去5〜10年)
  • リバランス:四半期(決算反映)、銘柄数:同率ウェイトで10〜20銘柄
  • コスト:売買手数料+スリッページ0.1〜0.3%を必ず控除
  • 生存者バイアス排除(現存銘柄だけで過去を回さない)
  • 先読み(ルックアヘッド)禁止:決算発表前の数値で選ばない

期間年率リターン最大DDボラ勝率ペイオフ比カルマー
戦略+12.4%-22.0%16.5%62%1.450.56
ベンチ+8.1%-24.5%17.8%57%1.180.33

過学習を避けるルール作成

✅ やること
  • 時系列で分割(学習→検証→本番の3分割)
  • ウォークフォワード:毎四半期ロールして検証
  • ルールは3〜5個に限定。追加時は削るルールも決める
  • 改定後は90日凍結(途中でいじらない)
  • パラメータは”幅”で決める(1%単位の微調整は禁止)
❌ やらないこと
  • 生存者バイアスのある過去データで回す
  • ランダム分割(時系列の構造を壊す)
  • コスト未考慮で成績を確認する
  • 単一年のリターンに全成績を依存させる
  • 凍結期間中に感情で修正する

STEP 8|買い方・ポートフォリオ設計

“良い銘柄”を”良い買い方”で持つ。入る・持つ・出るを数値で固定します。

エントリー基準(分割買い・乖離幅・イベント活用)

初回
30%

目標レンジに到達した時点で打診買い

2回目
30%

目標レンジ内の押しで追加(フェア−20%)

最終
40%

決算確認後に仮説補強されたら残弾投入

💡 テクニカル補助(最小限):200日線乖離 −5〜−10%でアラート設定。出来高急増の陰線は見送り。

ポジションサイズと分散

配分ルール上限
1銘柄の上限10%(最大でも15%)
A合計≤ 70%
B合計(試し玉)≤ 30%(1銘柄最大3%)
セクター上限1セクター 25%まで
現金バッファ常時 10〜20%

📋 配分ひな型(10〜12銘柄想定)
コア(A):7銘柄×各8% = 56%
サテライト(B):3銘柄×各5% = 15%
現金:15% / ETF・ヘッジ:14%(任意)

売却・乗換えルール(”仮説が壊れたら即撤退”)

🚪 撤退トリガー(ファンダメンタル)
  • 粗利率 −150bps 以上×2期連続
  • NRR < 100% / 受注QoQ −10%×2期
  • ICR < 3x or Net Debt/EBITDA > 3.0xへ悪化
  • 重要KPIの開示中止、継続企業の疑義
  • 希薄化 > 5%の連発
💹 価格トリガー
  • フェアバリュー比 +25〜30%で部分利確(1/3)
  • −15%で仮説点検、−25%で一旦クローズ
  • 乗換え:同セクターで優位な銘柄が割安圏に入ったら分割でIN
📋 売却の順番

①仮説崩壊銘柄 → ②相関被りの劣後銘柄 → ③フェア超過の割高銘柄

付録A|実務テンプレ(そのまま使える)

決算チェックリスト(5分版)

決算短信+説明会資料を手元に、上から順に◯/△/×で埋めるだけ。

【1】 サマリ(1分)
□ ガイダンス:上方/据置/下方(理由:価格/数量/為替/コスト)
□ 粗利率:改善/横ばい/悪化(一時要因 or 構造?)
【2】 セグメント(1.5分)
□ 価格×数量×ミックスで増減要因が説明されている
□ KPI(ARPU/同店/稼働/受注/バックログ)が目標レンジ内
【3】 CF・運転資本(1分)
□ 営業CFが利益と歩調を合わせている
□ 在庫・売掛・買掛の逆回転なし(在庫日数↑は注意)
【4】 資本配分(0.5分)
□ ROIC > WACC継続 / 投資CFの質が高い
□ 還元の整合(割安時の自己株買い、配当はFCF内)
【5】 リスク・開示(1分)
□ 重要KPIの開示継続・定義変更なし
□ 規制/為替/原材料の感応度が明示(または説明あり)

付録B|よくある誤解Q&A

Q. PERは低ければ低いほど良い?
NO。PERは”期待の低さ”も映します。構造的に成長が鈍い、景気ピークで利益が膨らんでいる——などの理由で見かけ上の低PERは起きます。見る順番は、①ROIC > WACCか(価値創造できているか)→②利益の持続性(粗利率・需要の質)→③同業比較のレンジ。低いだけで買うのは危険です。
Q. 配当利回りが高いほど安全?
NO。利回りは”未来の安全”ではなく、現在の価格と過去の配当の比です。業績悪化で株価が下がった結果の高利回りや、無理な還元でCFが枯れるケースもあります。確認すべきは①営業CFと配当の釣り合い(CFベース)②減配の耐性③配当方針の一貫性。利回りは”入口の指標”、持続性が本質です。
Q. 成長株にバリュエーションは不要?
NO。高成長でも価格を無視すると期待の剥落に耐えられません。使い方のコツは①PEG ≈ 1前後(成長率に見合うか)②EV/売上×粗利率(粗利の厚みで補正)③将来FCFの見通し(LTV/CAC・NRR)。”良い会社を、妥当な価格で”が長期の勝ち筋です。
Q. スクリーニングで完璧な銘柄が見つからない。どうすれば?
完璧な銘柄は存在しません。大切なのは「強みが弱みを上回り、弱みは織り込み済みか」を判断すること。全項目が高得点でなくても、競争優位と収益性だけが突出していれば十分A候補になりえます。弱点を明文化し、それが崩れたときの撤退条件を決めておくことが、不完全な銘柄を持ち続けるための技術です。

まとめ|続けられる”自分の型”を作る

📋 8ステップ スクリーニングフロー まとめ
STEP 1|投資ユニバースを決める

国・市場・時価総額・流動性・除外条件を1行で固定。母集団が決まればすべてが効率化する。

STEP 2|一次情報を読む

有報・決算短信・説明会資料をサマリ→セグメント→リスク→CFの順で5〜10分で判定。

STEP 3|定量スクリーニング(第一次ふるい)

OPM・ROE・ROIC・CAGR・健全性・バリュエで機械的に足切り。感情を入れない。

STEP 4|定性チェック(第二次ふるい)

競争優位・収益ドライバー・資本配分をクイックスコア(15点法)でA/B/Cに仕分ける。

STEP 5〜6|リスク明文化と候補絞り込み

前提→反証条件→撤退トリガーを数値+期間で固定。6軸スコアでA/B/Cを管理する。

STEP 7〜8|バックテスト+ポートフォリオ設計

過去の地合いで勝ち筋とドローダウンを確認。分割買い・ポジション上限・売却ルールを数値で固定する。

長期投資は「勘」ではなく「型」で勝ち続けるゲームです。完璧を狙うより、不完全でも同じ型を四半期ごとに回し続けることがリターンの源泉です。今日のアクション3つ——条件設定(10分)→10銘柄抽出(20分)→スコア表に転記(15分)——から始めてみましょう。