企業概要
三菱商事株式会社(証券コード:8058)は、国内最大手の総合商社であり、エネルギー資源、金属、食料、インフラ、不動産、モビリティ、デジタル事業など幅広い分野に展開しています。ビジネスモデルは事業投資とトレーディングを組み合わせたハイブリッド型で、持分法適用会社も多数保有しています。
国内外に多数の連結・関連会社を持ち、アジア、米州、中東など世界中に事業基盤を広げています。安定的なキャッシュフロー創出力と株主還元方針(累進配当)にも定評があり、長期投資家に人気の高い企業です。
定量分析
業績数値の比較
項目 | 2025年3月期 第1四半期 | 2026年3月期 第1四半期 | 2026年3月期 通期予想 |
---|---|---|---|
収益(百万円) | 4,685,953 | 4,218,706 | ― |
税引前利益(百万円) | 498,871 | 252,923 | ― |
純利益(百万円) | 402,078 | 220,629 | 700,000 |
親会社株主に帰属する純利益(百万円) | 354,359 | 203,121 | 700,000 |
EPS(円) | 86.93 | 51.59 | 186.74 |
配当金(円) | 100.00 | ― | 110.00(予想) |
財務諸表の変化点
資産構成:
総資産:21.5兆円 → 21.1兆円(▲3,732億円)
現金・現金等:▲1,918億円(1.53兆円 → 1.34兆円)
投資不動産:+2,789億円(取得・評価増)
棚卸資産:微減(在庫調整)
負債:
総負債:+922億円(社債・長期借入の増加)
短期借入金等の増加(流動性確保目的)
純資産:
自己株式取得で自己資本比率が43.6% → 42.2%に低下
利益剰余金:6.64兆円 → 6.49兆円(配当支払い等)
CF(キャッシュフロー)変化:
営業CF:3,380億円 → 1,082億円(▲2,298億円)
投資CF:1,434億円 → ▲1,895億円(大幅悪化)
フリーCF:+4,814億円 → ▲813億円
自己株式取得と配当で財務CFもマイナス
定性分析
観点 | 前期比で良くなった点 | 前期比で悪くなった点 |
---|---|---|
経営成績 | 持分法収益(+1387億円)、食品産業・電力関連が堅調 | ローソンの持分法適用化で収益・売上総利益減、有価証券損益・固定資産売却益の反動減 |
財政状態 | 有利子負債以外の負債は比較的安定、リース負債増少なし | 自己株式取得で自己資本減、純資産減少 |
将来見通し | LNG・電力・不動産・食品などの成長領域へ投資強化、累進配当継続 | 資源価格や為替変動、金利上昇など外部リスク、減益予想を維持(前年比▲26.4%) |
投資判断の示唆
業績トレンドの安定性・成長性
今期は前年同期比で減収・減益。ただし、要因は一過性(ローソンの非連結化や前期売却益の反動)であり、持分法損益や基盤事業は堅調。
財務健全性
資産規模の大きさや流動性、キャッシュ創出力に依然として強みあり。自己株取得による一時的な自己資本比率低下はあるが健全。
株主還元
累進配当を基本とし、増配(前期100円→今期予想110円)を発表。さらに自己株式取得も実施しており、総還元性向は高い。
業界動向やマクロ経済影響
資源価格や為替影響を受けやすいが、分散されたポートフォリオと国内外の事業バランスにより、景気変動に一定の耐性あり。
⚖️ 現時点での参考投資判断:保留(注視すべき要因あり)
業績は前年の高水準からの反動減だが、基礎体力に衰えなし。一方で、利益減・フリーCF悪化・株主還元といったバランスが難しい局面でもあるため、今後の四半期動向を確認したい。