高配当ETFという選択肢を、2025年の相場環境でどう考えるか
「株価の上下に振り回されず、資産をじっくり育てたい」
そんな気持ちがふと湧いてくるとき、高配当ETFという選択肢が頭に浮かぶかもしれません。
配当金を受け取りながら保有を続けられる高配当ETFは、いわば“資産の安定装置”のような存在。短期的な値上がり益よりも、中長期的なインカムゲイン(定期収入)に重きを置きたい方にとって、一つのヒントになり得ます。
2025年の投資環境を見渡すと、
米国の金利はピークを越えつつある可能性
景気後退リスクへの備えも必要
といった背景があり、配当を重視する投資戦略の立ち位置が変わりつつあります。
本記事では、「高配当ETFってどうなんだろう?」と感じている方に向けて、2025年時点での見通しやETF選定の視点、おすすめ候補を中立的な立場から紹介していきます。
最終的には「ETFにする?それとも個別株もアリ?」といった比較検討ができる内容を目指しています。
高配当ETFとは?メリットと注意点
高配当ETFの基本と魅力
「高配当ETF」とは、その名の通り配当利回りの高い企業を中心に組み入れたETF(上場投資信託)のことです。個別株のように1社に投資するのではなく、複数の企業に分散投資できる点が特徴です。
たとえば、米国株に投資する人気の高配当ETFでは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)やプロクター&ギャンブル(PG)、エクソンモービル(XOM)など、世界的に有名な安定企業が組み込まれています。
高配当ETFには、次のような魅力があります:
定期的な配当金が得られる安心感
→ 毎月・四半期・半年など、運用先によって異なりますが、定期的な「お小遣い」がもらえる感覚はやはり嬉しいものです。銘柄分散によるリスク軽減
→ 個別株では1社の業績悪化が大きな打撃になりますが、ETFなら複数企業に投資しているため、リスクが分散されます。管理の手間が少ない
→ 個別株と違って、業績チェックや売買のタイミングを頻繁に気にする必要はありません。「放っておける投資」として支持されています。
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投資する際の注意点
一方で、高配当ETFにもいくつかの注意点があります。購入前に理解しておきたいポイントを整理しておきましょう。
増配傾向か?タコ足配当に注意
→ 高配当であっても、「配当を出すために資産を取り崩している=タコ足配当」の場合は要注意です。配当の原資が利益か、元本かを見極める視点が大切です。信託報酬や構成銘柄のチェックを忘れずに
→ 運用にかかる信託報酬(コスト)は低い方が有利です。また、構成銘柄が偏っていないか(例:エネルギー株に集中していないか)も確認しておくと安心です。減配リスクや株価下落とのバランス
→ 景気悪化や金利の変動によって、配当が減る(減配)こともあります。さらに高配当銘柄は金利上昇時に株価が伸びにくい傾向もあるため、タイミングや環境によっては含み損を抱えることも。
高配当ETFは、うまく活用すれば資産形成の心強い味方になりますが、「利回りが高いから選ぶ」というだけでは不十分です。
2025年の注目ポイントと選定基準
2025年の投資環境を考えるうえで、「高配当ETFをどう位置づけるか」は、多くの投資家にとって一つのテーマになりつつあります。
特に今年は、金利の転換点や景気減速リスクへの備えといった視点から、インカムゲイン(配当)を重視した投資戦略が再評価される場面も出てくるでしょう。
この章では、高配当ETFに注目する背景と、銘柄を選ぶ際に押さえておきたい基準を紹介します。
米国金利のピークアウトが意識される2025年
ここ数年続いた利上げ局面も、2025年には利下げや据え置きへの転換が意識されるタイミングに入ってきました。インフレ圧力の落ち着きとともに、FRBが政策金利を徐々に引き下げていく可能性もあります。
このような環境では、将来の利益成長が期待されるグロース株に再び追い風が吹くというのが一般的な市場の見方です。しかしその一方で、
株価が軟調な中でも配当を安定的に出してくれる企業に注目が集まる
値上がり益ではなく、インカム収入(配当)を軸にした分散戦略を取り入れる動きが広がる
といった流れも見られる可能性があります。
つまり、グロース偏重になりがちな局面でも、リスク分散として高配当ETFを組み込むことが、戦略の選択肢として“アリ”になる場面が増えるということです。
景気減速に備えたディフェンシブ性の評価
2025年は、景気の減速リスクが徐々に意識される年でもあります。そんな中で注目されるのが、景気の影響を受けにくいディフェンシブセクターを含む高配当ETFです。
たとえば、高配当ETFに多く含まれる以下のような業種は、比較的業績が安定しやすく、景気後退時にも配当を維持しやすいとされています:
生活必需品(例:プロクター&ギャンブル/PG)
医薬品(例:ジョンソン・エンド・ジョンソン/JNJ)
通信・公益(例:ベライゾン/VZ、デューク・エナジー/DUK)
こうした業種を含むETFは、株価の下落耐性が高く、心理的にも安定感をもたらしてくれる存在です。
銘柄選定のカギは「利回り+財務健全性+分散性」
高配当ETFを選ぶ際、「利回りが高いから」だけで選ぶのは避けたいところです。
以下の3つの視点でバランスよく評価することが、2025年のような相場環境ではとくに重要になります。
観点 | チェックポイント |
---|---|
利回りの高さ | 過去の分配金推移、減配リスクの有無 |
財務健全性 | 増配実績、自己資本比率の高い企業が多いか |
セクター分散性 | エネルギー・金融など特定セクターへの偏りがないか |
また、ETFによっては「配当利回りが高い企業」だけでなく、「財務の健全性」「業界の安定性」などを加味して銘柄を選定しているものもあります。運用方針や選定ルールに注目すると、より納得感を持って選べるようになります。
次章では、こうした視点をもとに、2025年の環境下で比較検討したい注目の高配当ETFを3つご紹介します。
利回りの目安、構成銘柄、特徴などをわかりやすくまとめていますので、ぜひご参考にしてください。
2025年版!おすすめ高配当ETF3選
ここでは、2025年の市場環境を踏まえて、安定した配当収入と一定の分散性が期待できる米国の高配当ETFを3つ紹介します。
いずれも日本の証券口座(SBI証券、楽天証券など)から簡単に購入でき、長期保有に適した銘柄です。
それぞれの特徴や向いている投資スタイルも参考に、ぜひご自身に合ったETFを見つけてください。
【VYM】バンガード・米国高配当株式ETF
項目 | 内容 |
---|---|
運用会社 | バンガード |
分配金利回り(目安) | 約3%前後 |
経費率 | 0.06% |
構成銘柄例 | JNJ(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、PG(P&G)、JPM(JPモルガン)など |
セクター分散 | 生活必需品、金融、ヘルスケアなど |
特徴
・米国の大型優良企業を中心に構成された、高配当株の王道ETF。
・安定した配当と増配実績があり、長期投資との相性が抜群。
・2006年設定の老舗ETFで、リーマンショックやコロナショックなども乗り越えた実績あり。
こんな人におすすめ
→ 株価変動に一喜一憂せず、コツコツと安定収入を得たい人
→ 高すぎない利回りでも「継続性」や「企業の信頼性」を重視したい人
【HDV】iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF
項目 | 内容 |
---|---|
運用会社 | ブラックロック(iShares) |
分配金利回り(目安) | 約4%前後 |
経費率 | 0.08% |
構成銘柄例 | XOM(エクソンモービル)、CVX(シェブロン)、VZ(ベライゾン)など |
セクター分散 | エネルギー、通信、ヘルスケアなどにやや偏りあり |
特徴
・財務健全性の高い企業を中心に構成する独自のスクリーニングが魅力。
・不況期に強いディフェンシブ銘柄が多く、景気後退局面でも配当の安定性が期待できる。
・利回りと守備力のバランスに優れた設計。
こんな人におすすめ
→ 景気の先行きに不安があり、ディフェンシブに運用したい人
→ 利回りもそれなりに確保しつつ、安定性も妥協したくない人
【SPYD】SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF
項目 | 内容 |
---|---|
運用会社 | ステート・ストリート(SPDR) |
分配金利回り(目安) | 約5%前後 |
経費率 | 0.07% |
構成銘柄例 | USB(USバンコープ)、PFE(ファイザー)、OMC(オムニコム)など |
セクター分散 | S&P500の中から利回り上位80銘柄を均等加重で構成。偏りに注意。 |
特徴
・高利回りを追求したETFで、3つの中で最も分配金利回りが高いのが魅力。
・銘柄は年2回見直しされ、組入比率が均等でリバランス性に優れる。
・ただし、景気敏感株の比率が高く、減配リスクや株価変動には要注意。
こんな人におすすめ
→ 利回り重視の戦略を取りたい人
→ 他のETFと組み合わせて、収益性を高めたい人
→ 短〜中期で配当収入を強化したい人
🔍 3銘柄の比較早見表(参考)
ETF名 | 利回り(目安) | リスク耐性 | 分散性 | 増配傾向 | 向いている人 |
---|---|---|---|---|---|
VYM | 約3% | ◎ | ◎ | ◎ | 安定重視の長期投資家 |
HDV | 約4% | ○ | △(やや偏り) | ○ | ディフェンシブ重視 |
SPYD | 約5% | △ | ○ | △ | 利回り重視の戦略派 |
次章では、これらのETFをどのようにポートフォリオに組み込むか、また配当収入をどのように活用するかといった実践的な戦略を紹介していきます。
高配当ETFを活用する投資戦略
高配当ETFの魅力は、保有しているだけで定期的な配当金を得られる「インカム収入」にあります。
ここでは、実際に高配当ETFをどのように使えば不労所得につなげられるのか、また積立投資として取り入れるメリットについて解説していきます。
毎月の不労所得づくりに
■ 目指す収入:月1万円の配当を得るには?
たとえば「月1万円(年間12万円)」の配当収入を目指すとしましょう。
利回り別に必要な投資元本の目安をざっくりと試算すると、以下の通りです:
年間利回り | 必要元本(目安) |
---|---|
3%(VYM水準) | 約400万円 |
4%(HDV水準) | 約300万円 |
5%(SPYD水準) | 約240万円 |
※税引前・単利計算の概算
利回りが高いETFほど必要元本は少なく済みますが、リスクとのバランスも大切です。ETFの特性や自分のリスク許容度に合わせてポートフォリオを組むのが基本です。
■ 複利運用+再投資で効率アップ
配当金を受け取るたびに再投資することで、資産が複利的に増えていくというメリットも。
たとえば、VYMのような安定型ETFでも、再投資を続けることで10年後には運用効果が大きく変わってきます。
最初のうちは金額が少なくても、コツコツ積み上げれば「月1万円」も十分現実的です。
積立投資との相性
■ NISA・新NISAの活用法
2024年からスタートした新NISA制度は、高配当ETFとの相性も非常に良好です。
以下のようなポイントを意識すると効果的です:
つみたて投資枠で「VYM」や「HDV」を定期購入
→ 長期保有による資産形成にぴったり成長投資枠で「SPYD」などをスポット購入
→ 利回りを重視する戦略にも対応可能
NISA枠内なら配当金に税金がかからないため、特に高配当ETFとの組み合わせはインカム効率が高まります。
■ ドルコスト平均法でリスク分散
価格の上下に一喜一憂せず、**毎月一定額で積み立てる「ドルコスト平均法」**は、高配当ETFでも有効な戦略です。
相場が下がった時には多くの口数を購入でき、
相場が上がっても安定的に積み上げが続く
という仕組みは、長期目線でじっくり配当を増やしていきたい人にとっては心強い手法です。
🔍 ポイントまとめ
戦略 | 内容 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
配当収入の最大化 | 高利回りETFを中心に資金を集中 | 不労所得を早く増やしたい |
複利+再投資 | 配当金を再投資して資産成長 | 長期運用で資産を増やしたい |
NISA活用 | 配当非課税+積立運用 | 少額から効率よく投資したい |
ドルコスト平均法 | 毎月一定額で買い続ける | 相場のタイミングを気にせず投資したい |
高配当ETFは、投資スタイルやライフプランに応じて柔軟に組み込むことができます。
「今すぐ配当がほしい」方も、「将来のためにコツコツ育てたい」方も、無理のない範囲で取り入れることで、資産形成の幅が広がります。
まとめ|2025年も高配当ETFは選び方がカギ
2025年は、金利の転換点・景気の減速リスク・インフレの収束動向など、投資環境に大きな変化が起こりうる年です。
こうした中で「値上がり益よりも安定収入を重視したい」と考える方にとって、高配当ETFは引き続き有力な選択肢の一つといえるでしょう。
とはいえ、「利回りが高ければ良い」という単純な基準で選んでしまうと、リスクを見落としかねません。
✅ 高配当ETFを選ぶときのチェックポイント
分配金の継続性はあるか?
→ 企業の業績や増配傾向を確認構成銘柄に偏りはないか?
→ 特定のセクター集中や景気敏感株ばかりになっていないか利回りと価格変動リスクのバランスは?
→ 利回りが高くても、減配や価格下落リスクが高ければ要注意自分の投資目的・期間に合っているか?
→ 短期で配当を得たいのか、長期で再投資を続けたいのか
✅ 安定した資産形成に向けて
高配当ETFは、長期投資・資産分散・配当収入の3拍子がそろった魅力的な商品です。
2025年のように先行きが読みづらい年ほど、リスクを抑えつつ安定収入を得られる手段として、ポートフォリオに組み込んでおく価値があります。
初心者の方は「VYM」などから少額で始めてみるのもおすすめ
積立投資や新NISAの活用で、時間を味方にしながら配当資産を育てることも可能です
他の投資手法と組み合わせて、自分なりのバランスを探っていきましょう
将来に向けて安定した収入源をつくる第一歩として、高配当ETFをうまく活用していきましょう。
無理のない範囲で、継続的な投資を積み上げていくことが、将来の安心につながります。