企業概要
ボーイング(Boeing:NYSE: BA)は、米国を代表する航空機・防衛・宇宙開発のグローバル企業です。民間航空機(Commercial Airplanes)、防衛・宇宙・セキュリティ(Defense, Space & Security)、サービス(Global Services)の3事業を柱に展開。売上の多くを国際市場で構成しており、民間航空機ではエアバスと並ぶ世界最大級のメーカーです。近年は737 MAX問題や納入遅延、コロナ禍での航空需要減退から苦戦しましたが、回復基調にあります。
定量分析
業績比較表(単位:百万ドル)
項目 | 2024年Q2 | 2025年Q2 | 2025年通期見通し |
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売上高 | 19,750 | 15,540 | 73,000~76,000 |
営業利益(Loss) | △99 | △1,406 | 未開示 |
純利益(Loss) | △149 | △527 | 未開示 |
EPS(希薄化後) | △0.25 | △0.84 | 未開示 |
フリーキャッシュフロー | 2,583 | △527 | 0~30億 |
※通期見通しは売上・FCFのみ提示。EPSや利益は非開示。
財務諸表の変化点(前年同期比)
資産構成
現金及び現金同等物:+6億ドル(80億 → 86億ドル)
売掛金:+7億ドル(60億 → 67億ドル)
棚卸資産:+27億ドル(793億 → 820億ドル)
負債
長期債務:△14億ドル(394億 → 380億ドル)
短期債務:横ばい
未払費用:+5億ドル(納入遅延の影響)
純資産
純資産:+8億ドル(前期より資本増強あり)
株主持分:ほぼ横ばい(利益剰余金の減少を資本調達で相殺)
キャッシュフロー
営業CF:▲2038百万ドル(前年:+3370 → 当期:+1,332)
投資CF:ほぼ変動なし
財務CF:新規借入はなく、返済がやや進行
定性分析
観点 | 前期比で良くなった点 | 前期比で悪くなった点 |
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経営成績 | 受注残高は約4,870億ドルと高水準を維持(民間3,440億ドル) | 売上が前年同期比で約▲21%減、特に民間機納入台数の減少が響く |
財政状態 | 借入返済が進み、長期債務減少。資金調達の柔軟性あり | 棚卸資産の増加による資金拘束、営業CFが大幅悪化 |
将来見通し | 通期フリーキャッシュフローの黒字見通しは維持(最大30億ドル) | MAX・787機の納入ペース回復に遅れ、FAA対応や安全対策コストも継続 |
投資判断の示唆
- 1. 業績トレンドの安定性・成長性
→ 売上は減収、利益も赤字が拡大。民間機の納入回復が遅れており、回復力には不透明感あり。
- 2. 財務健全性
→ キャッシュ保有額は一定水準を維持。債務削減も進行中だが、棚卸資産増加が重荷。
- 3. 株主還元
→ 配当は未再開。再開時期も未定。自社株買い等も実施しておらず、株主還元は限定的。
- 4. 業界・マクロ経済影響
→ 航空機需要は回復傾向だが、ボーイングは安全性問題やFAA対応により供給回復が遅延。エアバスに比べ回復力で後れ。
⚖️【参考投資判断】:保留(注視すべき要因あり)
キャッシュ面や受注残高は一定の安心材料がありますが、赤字継続・納入回復の遅れ・安全性懸念などリスクが多く、現時点では積極的な「買い」は推奨しづらい状況。長期では復活期待も、今は注視が妥当です。