富士通(6702)は東証プライム上場のITサービス大手です。本記事では直近3年間(FY2022〜FY2024)の決算データを表形式でまとめ、財務状況の変化点・投資判断を解説します。
※数値はすべてIFRS(国際財務報告基準)連結ベース。配当・EPSは2024年4月の1:10株式分割後の数値に統一しています。
1. 企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 富士通株式会社(Fujitsu Limited) |
| 証券コード | 6702(東証プライム) |
| 決算期 | 3月末(IFRS基準) |
| 時価総額 | 約7兆9,282億円(2026年2月時点) |
| 株価 | 3,690円(2026年2月時点) |
| 発行済株式数 | 約20億7,100万株(2024年4月1:10分割後) |
| 主要事業 | サービスソリューション(DX・クラウド・SI)、ハードウェアソリューション |
| 主要指標(FY2024) | PER 15.8倍 / PBR 3.4倍 |
富士通は日本最大規模のITサービス企業の一つ。近年は「Fujitsu Uvance」をDX戦略の中核に据え、ノンコア事業の売却とサービス事業への集中を進めています。2024年4月には1:10の株式分割を実施し、個人投資家が買いやすい株価水準になりました。
2. 定量分析
📊 損益計算書サマリー(3年比較)
| 指標 | FY2022 (2023年3月期) | FY2023 (2024年3月期) | FY2024 (2025年3月期) | FY2023→FY2024 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 37,137億円 | 37,560億円 | 35,501億円 | ▲5.5% |
| 営業利益 | 3,356億円 | 1,602億円 | 2,650億円 | +65.4% |
| 営業利益率 | 9.0% | 4.3% | 7.5% | +3.2pt |
| 調整後営業利益 | — | 2,836億円 | 3,072億円 | +8.3% |
| 当期純利益 | 2,151億円 | 2,544億円 | 2,409億円 | ▲5.3% |
📊 1株当たり指標・配当
※2024年4月1:10株式分割後基準
| 指標 | FY2022 | FY2023 | FY2024 |
|---|---|---|---|
| EPS(1株当たり利益) | 76.6円 | 88.2円 | 約112円 |
| 年間配当金 | 28円 | 50円 | 50円 |
| 配当性向 | 約36% | 約57% | 約45% |
| PER(参考・現時点) | — | — | 約15.8倍 |
📊 財務体質・バランスシート
| 指標 | FY2022 | FY2023 | FY2024 | FY2023→FY2024 |
|---|---|---|---|---|
| 総資産 | 32,655億円 | 35,148億円 | 約36,500億円 | +3.8% |
| 自己資本(親会社帰属) | 15,868億円 | 17,523億円 | 約18,800億円 | +7.3% |
| 自己資本比率 | 48.6% | 49.8% | 約51.5% | +1.7pt |
| 有利子負債 | 15,287億円 | 15,959億円 | 14,389億円 | ▲9.8% |
| 現金・現金同等物 | 2,360億円 | 2,358億円 | 4,547億円 | +92.6% |
📊 収益性・キャッシュフロー指標
| 指標 | FY2022 | FY2023 | FY2024 |
|---|---|---|---|
| ROE(自己資本利益率) | 約13.6% | 約10.7% | 約12.1% |
| ROA(総資産利益率) | 約6.6% | 約6.5% | 約6.3% |
| フリーキャッシュフロー | — | 1,972億円 | 2,519億円+(第3四半期累計) |
| 営業CF | — | 3,092億円 | 堅調に推移 |
📊 四半期別業績(FY2024)
| 四半期 | 期間 | 売上収益 | 営業利益 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Q1 | 2024年4〜6月 | 8,300億円 | 213億円 | 第1四半期は通例低調 |
| Q2 | 2024年7〜9月 | 8,666億円 | 582億円(※) | 上期収益改善が明確化 |
| Q3 | 2024年10〜12月 | 9,248億円 | 457億円(※) | 累計1,252億円 |
| Q4 | 2025年1〜3月 | 9,287億円 | 1,398億円(推定) | 下期偏重の利益構造が顕在化 |
| 通期 | 2024年4月〜2025年3月 | 35,501億円 | 2,650億円 | 前年比+65.4% |
※Q2・Q3は調整後営業利益ベース推計。
📊 セグメント別業績(FY2024)
| セグメント | 売上収益 | 前年比 | 調整後営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 22,459億円 | +5.1% | 2,899億円 | 12.9% |
| └ Fujitsu Uvance | 4,828億円 | +31.0% | — | — |
| └ モダナイゼーション | 2,010億円 | +70.0% | — | — |
| ハードウェアソリューション | 11,199億円 | +1.1% | — | — |
| ユビキタスソリューション | 2,517億円 | ▲7.9% | — | — |
3. 財務諸表の変化点の見解
🔎 損益計算書(PL)の変化
売上収益は構造的に減少フェーズへ。FY2024の売上収益35,501億円はFY2023比▲5.5%。ノンコア事業(富士通コミュニケーションサービス等)の売却が主因で、一過性の減収です。一方、収益の核であるサービスソリューション事業は+5.1%増収と堅調であり、事業ポートフォリオの「質の向上」が進んでいます。
営業利益はV字回復。FY2023に構造改革費用で1,602億円(利益率4.3%)まで落ち込んだ営業利益は、FY2024に2,650億円(利益率7.5%)へ大きく回復。一過性費用を除いた「調整後営業利益」は3,072億円と過去最高水準です。
純利益は微減も実力値は過去最高。当期純利益は2,409億円(▲5.3%)ですが、FY2023に事業売却益等の一過性収益が含まれていたためです。調整後で見ると実力ベースの利益は着実に向上しています。
🔎 貸借対照表(BS)の変化
現金が急増し財務の安定性が向上。現金・現金同等物はFY2023の2,358億円からFY2024には4,547億円へ約+92.6%増加。ノンコア事業の売却代金約3,000億円が主要因です。有利子負債も15,959億円→14,389億円へ▲9.8%減少し、ネットの財務負債が大きく改善しました。
自己資本比率が50%超へ。3年連続で改善し、FY2022の48.6%からFY2024には約51.5%へ。安定した財務基盤を確立しつつあります。
🔎 キャッシュフロー(CF)の変化
営業CF(FY2023: 3,092億円)は安定的に創出できています。フリーキャッシュフローはFY2023の1,972億円からFY2024(第3四半期累計)で2,519億円と改善傾向。ノンコア事業売却による投資CFの改善も加わり、キャッシュ創出力は確実に高まっています。
4. 前期比(FY2023→FY2024)で良くなった点 ✅
| 項目 | 改善内容 |
|---|---|
| ① 営業利益 +65.4% | 1,602億円→2,650億円へV字回復。利益率も4.3%→7.5%へ+3.2pt改善 |
| ② 調整後営業利益が過去最高 | 2,836億円→3,072億円(+8.3%)。実力ベースの収益力が過去最高水準に到達 |
| ③ 現金が約2倍に急増 | 2,358億円→4,547億円(+92.6%)。財務の安全性・柔軟性が大幅改善 |
| ④ 有利子負債が減少 | 15,959億円→14,389億円(▲9.8%)。負債圧縮で財務体質が強化 |
| ⑤ DX事業の急成長継続 | Fujitsu Uvance +31%、モダナイゼーション +70%。高収益サービス事業の構成比向上 |
| ⑥ 自己資本比率が向上 | 49.8%→約51.5%へ改善。財務の安定性が続伸 |
| ⑦ ROE改善 | 約10.7%→約12.1%へ回復。資本効率性が向上 |
| ⑧ FCF改善 | 1,972億円→2,519億円+(第3Q累計時点)。キャッシュ創出力が向上 |
5. 前期比(FY2023→FY2024)で悪くなった点 ⚠️
| 項目 | 懸念内容 |
|---|---|
| ① 売上収益が▲5.5%減少 | 37,560億円→35,501億円。ノンコア事業売却が主因だが、売上の絶対額は減少トレンド |
| ② 当期純利益が▲5.3%減 | 2,544億円→2,409億円。前期はノンコア売却益等の一過性利益があったため比較不利 |
| ③ ユビキタスソリューションの減収 | ▲7.9%減。PC・スマートフォン関連需要の低迷が継続 |
| ④ 一過性費用の継続的な計上リスク | 人材ポートフォリオ変革費用(約400億円)等、構造改革コストが毎年一定程度発生する見込み |
| ⑤ 海外事業の不確実性 | 欧州での事業再編が継続中。グローバル収益貢献の遅れリスク |
| ⑥ 下期偏重の利益構造 | Q4に営業利益の53%が集中。季節性リスクが高く、Q4実績によって通期が大きくブレる |
6. 投資判断
📌 総合評価:中立〜弱い買い(中長期投資家向け)
🟢 強気シナリオ(買いの根拠)
| ポイント | 詳細 |
|---|---|
| DX事業の高成長継続 | Fujitsu Uvance(+31%)・モダナイゼーション(+70%)が牽引。FY2025では売上構成比30%目標で更なる収益改善が期待される |
| 利益率の改善余地 | FY2025の営業利益率目標は10.4%。達成すれば過去最高水準に並ぶ |
| 割安感(PER15倍台) | DX成長株としては相対的に割安。成長加速が確認されれば株価上昇余地あり |
| 株主還元強化 | 配当28円→50円へ大幅増額。今後も増配・自社株買い期待。配当利回り約1.4% |
| 財務の安定性 | 現金4,547億円・自己資本比率51%超。財務リスクが低く、追加の株主還元余地も大きい |
🔴 慎重シナリオ(リスク要因)
| リスク | 詳細 |
|---|---|
| 売上減少トレンド | ノンコア売却一巡後も売上が構造的に伸びにくい可能性がある |
| 構造改革コストの再発 | 毎年のように一過性費用が発生。真の利益水準の把握が難しい |
| PBR3.4倍は割高感も | バリュエーション的に既に相当部分の成長が織り込まれている可能性 |
| 海外・マクロリスク | 欧州景気後退・IT投資の優先順位変化・円高進行等の外部リスク |
💼 投資スタンス別の考え方
| 投資スタンス | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 長期投資(3〜5年) | ✅ 弱い買い | DX戦略の深化・利益率改善シナリオが実現すれば株主価値向上が期待できる |
| 中期投資(1〜2年) | ⚠️ 中立 | FY2025業績の進捗確認が必要。Q2・Q3決算での成長確認後に判断推奨 |
| 短期投資 | ⚠️ 中立 | 下期偏重の利益構造から前半は株価が軟調になりやすい。決算前後のタイミングが重要 |
🎯 注目すべき今後のカタリスト
- FY2025 Q1〜Q2決算でのFujitsu Uvance売上成長率の確認(30%成長継続か?)
- FY2025通期業績(営業利益率10%超の達成可否)
- 増配・自社株買い等の追加株主還元の発表
- 欧州事業の構造改革完了タイムライン
⚠️ 免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の株式の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。株式投資には価格変動リスクがあり、元本が保証されるものではありません。
データ出典:富士通株式会社IRページ(https://pr.fujitsu.com/jp/ir/)、各種金融情報サービス。数値はIFRS連結ベースで、一部推計・速報値を含みます。