冒頭:企業概要
Tesla, Inc.(テスラ/NASDAQ: TSLA)は、電気自動車(EV)およびエネルギーソリューションを展開するアメリカのテクノロジー企業です。主力の自動車事業ではModel 3・Yなどの量産型EVに加え、CybertruckやSemiの開発も進めており、近年はAI・自動運転・ロボティクス分野にも注力しています。サブスクリプション型FSD(自動運転ソフト)やエネルギー貯蔵(Megapack、Powerwall)などの非自動車事業も拡大中。アメリカ・中国・ドイツなど世界各地に製造拠点を持ち、グローバル市場を牽引しています。
定量分析
業績数値の比較(単位:百万ドル/EPSはドル)
項目 | 2024年Q2 | 2025年Q2 | 前期比(YoY) |
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売上高 | 25,500 | 22,496 | −12% |
営業利益 | 1,605 | 923 | −42% |
純利益(GAAP) | 1,400 | 1,172 | −16% |
EPS(希薄化後/GAAP) | $0.40 | $0.33 | −18% |
EPS(非GAAP) | $0.52 | $0.40 | −23% |
営業キャッシュフロー | 3,612 | 2,540 | −30% |
フリーキャッシュフロー | 1,340 | 146 | −89% |
現金・投資残高 | 30,720 | 36,782 | +20% |
※通期ガイダンスは未開示。
財務諸表の変化点(2024年6月末→2025年6月末)
資産構成
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現金・有価証券:+6Bドル(30.7B → 36.8B)
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在庫:+0.4Bドル(14.2B → 14.6B)
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固定資産(PPE):+5.7Bドル(32.9B → 38.6B)
負債構成
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買掛金:約横ばい(13.1B → 13.2B)
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長期負債:やや減少(5.5B → 5.2B)
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流動負債:増加(27.7B → 30.0B)
純資産
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株主資本:増加(66.9B → 77.3B)
キャッシュフロー
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営業CFは減少(3.6B → 2.5B)
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投資CFはマイナス拡大(−3.2B → −2.9B)
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フリーCFは急減(1.3B → 0.1B)
定性分析
観点 | 前期比で良くなった点 | 前期比で悪くなった点 |
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経営成績 | – サービス&その他事業(+17%) – エネルギー事業の粗利改善(Gross Profit過去最高) |
– 車両納入数−13%、ASP(平均販売単価)低下 – 規制クレジット収益減、営業利益−42% |
財政状態 | – 現金+投資残高が過去最高水準 – 固定資産投資による将来成長余地 |
– 営業CF・フリーCF大幅減 – 在庫増と固定費吸収率低下で効率悪化 |
将来見通し | – Robotaxiサービス(オースティン)開始 – 新モデル量産計画(低価格モデル、Cybercab)順調 |
– マクロ不透明性(関税・財政政策) – 車両販売の成長停滞と価格競争リスク |
投資判断の示唆
1. 業績トレンドの安定性・成長性
車両販売数や売上は前年割れだが、AIやRobotaxi、エネルギー事業が新たな収益源として育成中。短期的には減速傾向。
2. 財務健全性
自己資本比率60%超、キャッシュ36B超の強固な財務基盤。ただしキャッシュ創出力の鈍化には注意。
3. 株主還元
配当なし・自社株買いも未実施だが、将来の成長投資に充当中。EPS成長再加速が還元の鍵。
4. 業界・マクロ影響
EV業界は価格競争・政策変動に直面。テスラはAI・ソフト・ロボティクスで差別化を図るが、短期的には利益圧迫リスクも。
⚖️ 現時点での参考投資判断:保留(注視すべき要因あり)
Teslaは将来的な収益源としてAI・Robotaxi・エネルギー事業を着実に育てている一方で、主力の自動車販売が減速しており、利益率も圧迫されています。現時点では、短期的リスクと長期的期待が拮抗しているため、注視が必要なフェーズといえるでしょう。