こんにちわ、ちぷるそです。
2016年からマイナンバーカードの交付が始まって早6年が経ちました。
現在のマイナンバーカード普及率は44%(2022/5/1時点)となり、50%を超えそうなところです。
総務省 – マイナンバーカード交付状況について
マイナンバーの考え方はオーストリア電子政府などの諸外国の共通番号の仕組みをベースにしています。
仕組み上は大きく変わらないのになぜ普及率や利活用が進んでいないか、そこにはマーケティング戦略の違いがあるのではないかと考えています。
この記事では、マイナンバーを国民が利用するにあたり最も利用されると想定していたであろう「マイナポータル」を中心に、何ができるのか、なぜこんなに使いにくいのかについて述べたいと思います。
この記事でわかること
- マイナポータルとは
- マイナポータルでできること/できないこと
- マイナポータルは今後どう発展するのか
マイナポータルとは
Googleでマイナポータルと検索すると、「トップページ | マイナポータル」がヒットします。
マイナポータルとは?に書いてあるように、「あなたのためのマイナポータル」とあります。
マイナポータルでは以下のような機能があるようです。
- いつでもどこでも行政の手続きができる
- ご自身の情報やお知らせを必要な時に確認できる
- 外部ウェブサイトと繋げて便利に使える
- 最高レベルのセキュリティで安心して使える
抽象的な記載なので具体的にどのようなことができるかみていきましょう。
マイナポータルでできること/できないこと
+ いつでもどこでも行政の手続きができる
行政の手続きをオンライン上でできるサービスを「ぴったりサービス」と言うそうです。
市区町村の郵便番号を選択して、サービスカテゴリを選択すると、行政手続きの候補が選択できます。
これは便利ですね。
– しかし、例外がある
ぴったりサービスについて細かくみてみると以下のような注意書きがあります。
つまり、マイナポータルとしての機能はあるけど、行政機関が対応してるかは知らないよと言うことです。
例えば、引越し等で市区町村が変わると今までオンラインでできていた手続きができなくなる可能性があるということです。また、できるかできないかは自身で調べてみないと分かりません。
これは使いにくいと言われるポイントかと思います。
+ ご自身の情報やお知らせを必要な時に確認できる
この仕組みはマイナポータルが国民自身に代わって、
行政機関から必要な情報を取得し、
取得した情報を閲覧できるサービスです。
以下のような情報が閲覧できます。詳しくは「特定個人情報等の項目一覧」をご確認ください。
- 健康・医療
- 税・所得
- 年金関係
- 子ども・子育て
- 世帯情報
- 福祉・介護
- 雇用保険・労災
また、お知らせと言い、行政機関等とつながることで、個人宛のお知らせを受信することができます。
お知らせの送付元は以下のような機関があります。
- 市区町村
- e-Tax(国税庁)
- ねんきんネット(日本年金機構)
- e-私書箱(野村総合研究所)
- MyPost(日本郵便)
- ふるさと納税e-Tax連携サービス(シフトセブンコンサルティング)
お知らせ送付元が増えれば、国民の個人にカスタマイズされたお知らせをプッシュ通知できるので便利そうですよね。
– しかし、取得した情報は見にくい
実際に「わたしの情報」というサービスを利用し、児童手当の情報を取得してみました。
一部を抜粋して表示します。
項目名のみ抜粋しましたが、実は1ページ分しか抜粋していません。
実はこの後も同じ項目が繰り返されており、10ページ以上続くのです。
機能は十分なんだけれども、使い勝手は悪いですねぇ。
+ 外部ウェブサイトとつなげて便利に使える
連携できるサイトや機能は以下のようです。
- 国税庁 – 国税電子申告・納税システム(e-Tax)
- 日本年金機構 – ねんきんネット
- 総務省 – 電波利用 電子申請・届出システムLite
- 厚生労働省 – 求職者マイページ(ハローワークインターネットサービス)
- 日本郵便 – MyPost
- 野村総合研究所 – e-私書箱
- シフトセブンコンサルティング – ふるさと納税e-Tax連携サービス
接続先は少ないですが、無事に連携できれば便利な予感はしますね。
– しかし、カードリーダーが別途必要
実際に日本年金機構のねんきんネットに繋げてみましょう。
これ、何が起きているか分かりにくいので説明します。
マイナポータルからねんきんネットに繋げようとしています。
マイナポータルはPCからログインする際にスマートフォンのカードリーダー機能でログインできるため、PCに繋げて使用するカードリーダーは不要です。
ねんきんネットはPCからログインする際にスマートフォンのカードリーダー機能は使用できないため、PCに繋げて使用するカードリーダーが必要なんです。
ねんきんネットを単体で使う場合はスマートフォンのカードリーダー機能でログインできるため、機能としてはあるんです。
つまり、マイナポータルもねんきんネットもPCからマイナンバーカードでログインする機能、スマートフォンからマイナンバーカードでログインする機能は備えているものの、マイナポータルからねんきんネットに接続する際にはカードリーダーが別途必要ということです。
マイナポータルが不便と言われるところ
マイナポータルでできることを見てきましたが、便利なところと不便なところがイメージできたかと思います。
マイナポータルやマイナポータルに接続する機関の設計者から見ると、
- 必要な機能は備えている
と言うと、確かにその通りです。
国民から見ると、「使いにくい」となります。理由は、
- 取得した情報が見にくい。。
- スマートフォンでログインできると思ったのに、カードリーダーがいるのか。。。
- 便利そうに見えるけど、何ができるのかよくわからない。。。
確かにその通りです。
マイナポータルがなぜ分かりにくいのか
結論、マイナポータルは使い勝手が良くないです。
なぜこうなっているのかというと、マイナポータルが1つのシステム、1つの機関で完結しないからです。
例えば、「わたしの情報」を取得する場合、情報の保有機関に情報を取得する必要があります。
機関毎にフォーマットや保存形式が異なれば、取得した情報の見方も異なります。
マイナポータルの設計時に行政サービスに詳しい人がいて、表示のさせ方を作り込んでいればこのようなことにはならなかったでしょう。
また、マイナポータルは外部ウェブサイトと繋げることでサービスを拡大します。
ここで言う外部サービスには、既に情報が洗練されている機関もありますが、多くの機関は情報が体系的に管理されていなかった機関です。そのため、外部サービスと連携するたびにデータフォーマットを適切に設計する必要が出てきます。しかし、直近の動きでサービス稼働を先行する場合は、取得した情報をそのまま表示する機能からリリースすることになりかねません。そうすると、また分かりにくいと言う評判を得ることになります。
分かりにくさを総括すると、
サービス設計時にデザイン思考のようなユーザー導線を考えていなかったのではないかと思います。
サービス設計時にユーザー導線を捉えた上で、「この便利な機能が使えます!」とマーケティング的に謳い、国民が便利と感じていれば普及率は違っていたはずです。
しかし、デザイン思考やマーケティング戦略が不足しており、リリースされている機能を使ってみたら使い勝手が悪かった、と言う評判が先行した結果、現在の普及率になっているのではないでしょうか。
マイナポータルを今後どう発展するのか
国民の「利便性が悪い」と言う声に対し、ユーザーインターフェースの改善で対処しようとしているように見受けられます。「デジタル庁 – マイナポータルのデザインをリニューアル〜」
確かに必要な改善ですが、選択と集中で「マイナポータルがないといけない」レベルのサービスを作るべきです。今は全体的に便利になりつつあるフェーズですがマイナンバーカードを受け取っていない過半数の国民が取得したくなるようなサービスはリリースされていません。
また、外部機関とサービス連携する際は、国民の一連の流れをデザイン思考で設計するべきです。この設計の難しさは主体が誰なのかと言うところにあります。
マイナポータルの設計者が主体なのか、外部機関が主体となるのか、と言う部分です。
マイナポータルは国ですが、外部機関は多岐にわたります。
マイナポータルの改善は当然として、外部機関側で追加設計すべき機能も発生します。ここをマイナポータル側が主体となって改善することで、利便性の高いマイナポータルが実現できると考えています。
以上、主観でした。