株が割安か否かを判断する際にPERをよく利用します。
一般的にPERは15倍が平均で、それより低い場合は割安、高い場合は割高と表現します。
一方で、銀行業の業界平均PERは8.3倍で、医薬品の業界平均PERは37倍です。
銀行業は軒並み割安で、医薬品は軒並み割高なのかというとそうではありません。
PERは業界毎に特性が異なります。
また、プライム市場では平均19.1倍、グロース市場では77.7倍と、市場によっても大きな差があります。
これは、企業への成長期待に対する違いです。大型で成熟した企業群を有するプライム市場では良くも悪くも急激な成長に乏しい傾向がありますが、小型で急成長が期待できる企業群を有するグロース市場はその期待からPERも高くなります。
このようにPERの指標1つをとっても一概に評価できない株価を具体的にどのように評価し、売買判断をするべきかを説明します。
前提知識(PER)
まずPERのおさらいからです。
PERとは株価が割安か割高かを判断するための指標です。
「株価」が「1株あたりの利益」の何倍かを示します。
つまり、「PERとは株価を何年分の利益で回収できるか」という指標です。
1株2500円で1株あたりの利益が250円の場合、PERは10倍です。
10年で2500円を回収できることになります。
計算式は、
PER(株価収益率:倍) = 株価 ÷ EPS(1株当たり利益)
となります。
PEGレシオとは何か
PEGレシオとは、PERが割高か割安かを測る指標です。
PERは「株価を何年分の利益で回収できるか」という指標ですが製薬会社のような製薬開発の期待されている企業はPERも高くなりますし、銀行のような長期的な利益が期待されていないような企業はPERも低くなります。この高低差は利益だけではなく、業界毎の収益構造も影響しています。
このような業界差異があるため一概にPERが○倍だからこの企業は買い/売りということは断言できません。そこで活用できる指標がPEGレシオです。
計算式は、
PEGレシオ = PER ÷ 1株あたり利益成長率
となります。
つまり、PEGレシオで表しているものは「利益成長を加味した企業の割安性」です。
PEGレシオは以下のような評価をします。
2倍〜 | 割高 |
1倍〜2倍 | 普通 |
〜1倍 | 割安 |
PERとPEGレシオの関係性
改めて計算式は、
PEGレシオ = PER ÷ 1株あたり利益成長率(%)
です。
PEGレシオの式にPERの計算式をはめると、
PEGレシオ =株価 ÷ 1株あたり利益 ÷ 1株あたり利益成長率(%)
になります。
具体的な数字を当てはめてイメージをすると、
PEGレシオ = 2,000円(株価) ÷ 100円(1株あたり利益) ÷ 20(利益成長率:%)
この場合は、PER20倍で割高に見えるが、PEGレシオが1倍になるから、割安ですね。という見方になります。
PERとPEGレシオの利用例
さて、ここまででPERとPEGレシオの関係性がわかってきたので、実際の企業に当てはめてみます。
PEGレシオが低そうな企業を選定しました。
東証グロース市場の「No.1」銘柄コード:3562を例として試してみます。
決算日2022/10/14に行われた2023年度2月期の第2四半期決算短信をもとに計算します。
2022/10/14の株価(終値):852円
1株あたり純利益:85円
株価(2022/10/14終値) | 852円 |
1株あたり純利益 | 85円 |
1株あたり純利益成長率(85円→117円) | 37% |
PERのみ使った場合
PER = 852円 ÷ 85円
PER10倍となり、PERだけを見ると割安みえます。
しかしPERは割安でも成長率が鈍いと買いではありません。
PERとPEGレシオを併用して使った場合
では、実際にPER10倍が割安水準となるのか、PEGレシオで確認します。
PEGレシオ = PER ÷ 1株あたり利益成長率
PEGレシオ = 10(倍) ÷ 37(%)
PEGレシオ = 0.27(倍)
となり、当企業はPERが低く、PEGレシオも低いため、買いの候補に入っても問題ないでしょう。
その後の株価推移を見てみると、2023/1/11時点で1,233円まで値上がりしています。