今週の決算情報 #010|損保3メガが揃って決算+増配+自社株買い(2026年5月18-20日)

2026 EDITION | WEEKLY EARNINGS DIGEST #010

UPDATED 2026.05.20(WED) / 3月期決算ラッシュ最終週 ─ TDnet 396件を「株主還元/業績サプライズ/中期経営計画」の3軸で読み解く。今週の主役は損保3メガ(東京海上・MS&AD・SOMPO)の決算+還元パッケージ。

QUICK GUIDE / 3秒で「自分が見るべき銘柄」が分かる

連続増配・大型還元を追いたい人 → 東京海上(8766・年配218円+自社株買い4,000億方針)・MS&AD(8725・160円+2,700億方針)・SOMPO(8630・150円+V字)・WNIウェザーニューズ(4825・40周年記念増配)
業績の急回復・サプライズを狙いたい人 → SOMPO(8630・純利益+163.3%)・MS&AD(8725・+13.8%)・メガチップス(6875・最終益が過去最高水準)・3Dマトリックス(7777・為替差益で上方修正)
新中期経営計画を確認したい人 → MS&AD「経営計画2030」(修正利益8,000億円超)・オカダアイヨン「Onyx FY2026-2028」・明和産業「PI2028」・アドソル日進「New Canvas 2031」・山洋電気「第10次中計」
大型株の自社株買い動向を追いたい人 → 東京海上(8766)・MS&AD(8725)・キヤノン(7751・2,000億上限)・信越化学(4063・ASR)・SOMPO(8630・690億上限)・丸井G(8252)

連載「今週の決算情報」第10回は、3月期決算ラッシュの最終週にあたる2026年5月18日(月)〜5月20日(水)の3日間を対象にお届けします。TDnetへ提出された開示は合計396件。前々週(745件)・前週(5,598件)のピークを越え、本決算ラッシュはほぼ出揃いました。今週の最大の見どころは、損害保険3メガ(東京海上HD・MS&ADインシュアランス・SOMPOホールディングス)が5月20日に揃って本決算と還元パッケージを発表したことです。前回(第9回)の主役がメガバンク(三菱UFJ・三井住友トラスト)だったことを思えば、今週は金融セクターの株主還元ラッシュの締めくくりと位置づけられます。数値はすべて決算短信および適時開示PDFの本文から事実ベースで引用しています。

今週の3指標

最大の純利益伸び率

+163.3%

8630 SOMPO HD
IFRS当期利益・増配を伴うV字

最大の自社株買い方針額

4,000億円

8766 東京海上
2026年度方針(今回2,000億上限決議)

3日間のTDnet開示総数

396件

うち配当予想111件
本決算ラッシュの最終週

今週のカテゴリ別件数(3日合計)

カテゴリ3日合計特徴
配当予想111件最多カテゴリ。増配・記念配当・配当方針変更が中心
決算説明資料81件短信の補足。図表でビジュアルに理解できる
決算短信64件3月期の出遅れ組と訂正開示が中心。損保3メガが集中
自社株買い45件損保・大手製造の大型枠が目立つ
M&A・組織再編42件構造変化のサイン。評価倍率見直しのきっかけ
資本政策29件株式分割・自己株式消却など
中期経営計画16件「2028」「2030」「2031」を期末年度とする新中計が並ぶ
業績予想修正8件通期実績との差異開示が中心、上方・下方混在
合計396件本決算ラッシュの最終週、3日でこの規模

株主還元軸|損保3メガが揃って「決算+増配+自社株買い」

今週の中核は、5月20日に出揃った損害保険3メガの決算です。3社とも「最終利益・増配・自社株買い」をワンセットで開示しており、東証が進める資本効率改革(PBR1倍割れ対策)の文脈で読むと、金融セクター全体の還元強化がいよいよ損保にも波及した週だと整理できます。最終利益の方向はバラバラですが、3社とも還元(配当・自己株式取得)はしっかり積み増しているのが共通点です。

8766 東京海上ホールディングス|最終益は減でも還元は増強

国内損保最大手。日本基準の連結最終利益は前期比で減少しましたが、これは前期(2025年3月期)に純利益が+51.7%と大きく伸びた反動という側面が大きく、配当・自社株買いはむしろ拡大しています。年間配当は172円→218円(+26.7%)、来期予想は245円(さらに+12.4%)と連続増配。自社株買いは2026年度を通じて4,000億円とする方針を示し、うち今回2,000億円(上限)の取得を取締役会で決議しました。

指標前期(25/3)当期(26/3)伸び率
経常収益(百万円)8,440,1148,872,277+5.1%
経常利益(百万円)1,460,0071,348,630△7.6%
親会社株主帰属純利益(百万円)1,055,276980,428△7.1%
年間配当(円)172.00218.00+26.7%
来期配当予想(円)218.00245.00+12.4%

初中級者向けの読み方:損保大手は、台風など自然災害の発生規模や、保有する株式の売却益によって最終利益が年ごとに大きくブレます。だからこそ「最終利益が前期比で減った=悪い決算」と短絡せず、配当と自社株買いを合わせた“還元の方向”を見るのがコツです。東京海上は最終益が減っても増配+大型自社株買いを継続しており、還元姿勢は明確に強気です。配当性向も31.7%→42.3%→55.5%(来期予想)と段階的に引き上げています。

💡 チャンスのタネ:損保が抱える「政策保有株式」の売却ペースが、今後の還元原資の鍵。次の中間決算で、政策株式の縮減進捗と自社株買いの執行状況をセットで確認したい。

8725 MS&ADインシュアランス|増収増益+経営計画2030を同時発表

あいおいニッセイ同和・三井住友海上を傘下に持つ大手損保グループ。今期は経常収益・経常利益・最終利益のすべてが二桁前後の増加で、3メガのなかで最もバランスの良い決算でした。あわせて新たな「グループ経営計画(2030年度目指す姿)」を発表し、株主還元の枠組みも更新しています。

指標前期(25/3)当期(26/3)伸び率
経常収益(百万円)6,660,8137,653,030+14.9%
経常利益(百万円)928,9891,120,230+20.6%
親会社株主帰属純利益(百万円)691,657787,339+13.8%
年間配当(円)145.00160.00+10.3%
来期配当予想(円)160.00170.00+6.2%

初中級者向けの読み方:MS&ADの新計画「経営計画2030」は、政策保有株式の売却が完了した後の2030年度においても、安定して修正利益8,000億円超をあげる収益構造を確立し、将来的には1兆円規模を目指す、という内容です。ここで重要なのが「修正利益」という言葉。損保は会計上の最終利益が災害や株式売却でブレるため、本業の実力を測る独自指標として修正利益を使います。「会計上の利益」と「本業の実力(修正利益)」は別物と理解しておくと、損保の決算がぐっと読みやすくなります。自社株買いも2026年度に2,700億円を実施する方針(うち今回1,900億円が上限決議)です。

💡 チャンスのタネ:「修正利益の50%を基本に配当+自社株買いで還元」という方針が、政策株式の売却益でどこまで上ぶれするか。中計の進捗を年次でウォッチする価値がある。

8630 SOMPOホールディングス|純利益+163%のV字、配当も増額

損保ジャパンを中核とするグループ。今期はIFRSベースで税引前利益・最終利益が前期比2.5倍超と、3メガで最も鮮烈なV字回復を示しました。前期に利益が大きく落ち込んだ反動という面はありますが、配当も132円→150円(+13.6%)へ増額しています。自社株買いは今回690億円(上限)を決議し、その内訳を「基礎還元354億円+政策株式売却益などに基づく追加還元336億円」と明示している点が、還元ロジックの透明性として注目できます。

指標前期(25/3)当期(26/3)伸び率
営業収益(百万円)5,065,5205,372,921+6.1%
税引前利益(百万円)330,279843,226+155.3%
親会社所有者帰属当期利益(百万円)243,132640,086+163.3%
年間配当(円)132.00150.00+13.6%

初中級者向けの読み方:純利益+163%という数字は強烈ですが、ここでも「前期がどうだったか」を必ずセットで見ましょう。SOMPOは前期に最終益が半分以下(△54.1%)まで落ち込んでおり、今期はその反動を含むV字です。とはいえ、配当を増額し、還元の内訳を「基礎+追加」に分けて開示する姿勢は、中長期の株主にとって読みやすさという意味でプラスに働きます。配当性向は前期52.6%→今期21.4%へ低下していますが、これは利益が急増した結果であり、減配ではない点に注意してください。

💡 チャンスのタネ:「基礎還元+政策株式売却益の追加還元」という設計は、政策株の縮減が続く数年間、追加還元が乗りやすい構造。3メガの還元方針を横並びで比べると、自分の重視軸に合う1社が見えてくる。

業績サプライズ軸|「最終益の数字」と「中身」を分けて読む

今週は、最終利益の見栄えと本業の実力がズレている開示が複数ありました。サプライズ系の決算ほど、「何で利益が出た/消えたのか」を一段掘る習慣が効きます。

6875 メガチップス|本業は営業赤字、最終益は過去最高水準

半導体・LSI設計の中堅。今回の業績修正では、営業利益が赤字(△1.7億円)にもかかわらず、親会社株主に帰属する当期純利益は92.8億円・EPS578.31円と「過去最高水準」となる見通しを開示しました。これは保有する投資有価証券の売却益が大きく寄与したためです。

初中級者向けの読み方:「過去最高益」という見出しに飛びつく前に、営業利益(本業の儲け)と最終利益(一過性を含む)の符号が逆になっていないかを確認するのが鉄則です。メガチップスは本業が営業赤字で、最終益は資産売却という一過性の要因で押し上げられています。こうした利益は翌期に繰り返されない可能性が高く、「最高益=来期も期待」とは限りません。

💡 チャンスのタネ:注目すべきは本業(営業利益)の回復タイミング。半導体需要のサイクルが上向くなかで、本業が黒字に転じる四半期を待つ、という観察対象として面白い。

7777 スリー・ディー・マトリックス|為替差益で経常・純利益を上方修正

止血材などを手がける医療ベンチャー。前期は事業収益69.3億円に対し営業利益△11.5億円・最終損失△25.0億円という赤字体質ですが、今回は2,660百万円の為替差益(営業外収益)が発生したことで、経常利益と最終利益の予想を上方修正しました。

初中級者向けの読み方:これも「営業外」の一過性要因による上方修正です。為替差益は円安局面で発生しやすく、為替が反転すれば消えます。本業の損益(営業利益)が改善したわけではない点を押さえておけば、「上方修正=好材料」と単純に受け取らずに済みます。

中期経営計画軸|「2028・2030・2031」を期末年とする新中計が続出

今週は16件の中期経営計画が提出されました。最大の注目は前述のMS&AD「経営計画2030」ですが、中堅企業からも数値目標を伴う新中計が複数出ています。発表されたばかりの中計は「計画の中身(数値・期間・還元方針)」を一度確認し、以降は進捗を年次で追うのが連載の基本スタンスです。

コード企業 / 中計名特徴
8725MS&AD / 経営計画20302030年度に修正利益8,000億円超、将来1兆円規模を目標。損保最大級の中計
6294オカダアイヨン / Onyx FY2026-FY2028解体・破砕機の専業メーカー。決算と同時に新3カ年計画を公表
8103明和産業 / PI2028化学品商社。3カ年の新中計を策定
3837アドソル日進 / New Canvas 2031社会インフラ系ITサービス。2031年度を期末とする長期計画
6516山洋電気 / 第10次中期経営計画電源・冷却ファンの専業。継続的な中計ローリングの実績企業

自社株買い軸|損保・大手製造の大型枠が並ぶ

「方針総額(年間でいくら還元するか)」と「今回決議分(今回いくらの枠を取ったか)」は別物です。報道では大きい方の数字が見出しになりがちなので、適時開示の原文で両方を確認する習慣をつけると、過大評価を避けられます。

コード企業内容
8766東京海上HD2026年度の自社株買い方針4,000億円。うち今回2,000億円(上限)を決議
8725MS&AD2026年度に2,700億円を実施する方針。うち今回1,900億円(上限)を決議
8630SOMPO HD今回690億円(上限)。基礎還元354億+追加還元336億の内訳を明示
7751キヤノンToSTNeT-3により今回2,000億円(上限)の買付けを実施
4063信越化学工業一括取得型(ASR)の事後調整が完了。大型還元の実行段階
8252丸井グループ設定枠(200億円)に対する取得を終了
2784アルフレッサHDコミットメント型(FCSR)による取得を実行。前回(第9回)からの継続

注目の増配・記念配当

  • 4825 ウェザーニューズ:創業40周年の記念配当を増額。期末配当予想を57.50円(普通22.50+記念35)→62.50円(普通22.50+記念40)に修正。連結配当性向100%を目安とする方針。記念配当は単年の特別要因なので、翌期の「普通配当の水準」を見ておきたい。
  • 7481 尾家産業:期末普通配当55円で、中間47円とあわせ年間102円。連結配当性向30%以上を目標に据える業務用食品卸。
  • 8887 シーラホールディングス:通期業績予想とあわせ、期末配当予想を6.00円→7.00円(+16.7%)に増額修正。

⚠️ 警戒・要観察銘柄

今週は損保3メガを中心に還元強化のポジティブな開示が目立ちましたが、利益水準の薄い決算も出ています。

  • 4720 城南進学研究社:前期の最終損失△4.2億円から今期は最終利益わずか4百万円へ。営業・経常段階では黒字転換したものの、特別損失の計上を伴う通期予想修正の経緯があり、利益水準は実質トントン。配当余力という観点では引き続き要観察。

連載続報|前回までに取り上げた銘柄の動き

  • 2784 アルフレッサHD:第9回で「純利益+52.4%」のサプライズ組として取り上げ。今週はコミットメント型(FCSR)による自己株式取得を実行しており、業績好調→還元実行という流れが継続している。
  • 8306 三菱UFJ・8309 三井住友トラストG:第9回でメガバンクの増配・複合発表として取り上げ。今週の損保3メガの還元ラッシュと合わせ、「金融セクター全体の株主還元強化」という大きなテーマが、銀行→損保へと一巡した格好。
  • 8282 ケーズHD・7196 Casa:中計の「上方修正できる企業」vs「下方修正した企業」の対比として継続追跡中。今週は新たな開示は確認できず、引き続き次の四半期報告で進捗を確認する。

まとめ|今週の3つの教訓

損保は「最終益の増減」だけで測らない

災害や政策株式の売却で最終益はブレる。配当・自社株買いの方向と、本業の実力を示す「修正利益」をセットで見るのが損保決算の読み方。東京海上は最終減益でも還元は増強だった。

サプライズは「本業」と「一過性」を分ける

メガチップスの過去最高益は資産売却益、3Dマトリックスの上方修正は為替差益が主因。営業利益と最終利益の符号・要因をチェックすれば、見出しに振り回されない。

自社株買いは「方針総額」と「決議分」を分ける

東京海上の4,000億は年間方針、今回決議は2,000億。SOMPOは内訳を基礎・追加に分けて開示。原文で両方を確認すると、還元の実体が見える。

ポイント:第9回のメガバンクに続き、今週は損保3メガが「決算+増配+自社株買い」を一括開示しました。これは個別企業の判断というより、東証のPBR1倍割れ対策・コーポレートガバナンス改革と整合する金融セクター全体の制度的な還元強化の流れです。3メガの還元方針(修正利益の○%、政策株式売却益の追加還元など)を横並びで比べると、自分の重視軸に合う1社が見えてきます。単週のニュースではなく、向こう3〜5年の地形図として読むのがおすすめです。

来週(5/25週)の注目テーマ

3月期決算の本ラッシュは今週でほぼ出揃いました。来週以降は、本ラッシュ各社の決算説明会資料・補足説明資料の提出が続き、新中計(2028・2030・2031)の具体的な数値目標と還元方針の中身を追加で確認できる週になります。あわせて、12月期決算企業の第1四半期報告(2026年12月期Q1)の提出が増えていく時期に移行します。本連載は来週も週次総括号として続けます。


📅 RECORD

最終更新日:2026年5月20日
初稿公開日:2026年5月20日

📚 データ参照元

  • TDnet(東京証券取引所 適時開示情報閲覧サービス):2026年5月18日〜2026年5月20日提出の配当予想111件・決算説明資料81件・決算短信64件・自社株買い45件・M&A/組織再編42件・資本政策29件・中期経営計画16件・業績予想修正8件=合計396件
  • 各企業の決算短信・適時開示PDF(提出日: 2026年5月18日〜5月20日)
  • 業績数値・配当・中期経営計画・自社株式取得額等は決算短信および適時開示本文より引用
  • 本記事公開時点の最新情報を基に作成

📝 編集ノート(運営者より)

本記事は、ITエンジニア/プロジェクトマネージャー歴12年・投資歴7年の運営者「まもる」が、TDnetの一次情報を基に編集しています。NISA満額(月30万円)を継続中で、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と楽天・高配当株式・米国ファンド(楽天SCHD)の2銘柄構成で長期投資を実践中です。日本株の個別銘柄は保有していないため、本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値はすべて、各企業の決算短信および適時開示PDF原文より引用しています。事実誤りや疑問点に気づいた方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。