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2026 EDITION | WEEKLY EARNINGS DIGEST #003
QUICK GUIDE / 3秒で「自分が見るべき銘柄」が分かる
連載「今週の決算情報」第3回は、データソースをTDnet(東京証券取引所の適時開示)に切り替えて本格スタートしました。2026年5月4日〜5月8日(実質営業日5/7・5/8の2日間)にTDnetへ提出された開示は合計745件——前回までEDINETベースで26〜38件だったところから、一気に約20倍の規模になります。3月期決算企業の本決算ラッシュ初日と2日目で、プライム主力企業の動きが集中しました。
① なぜTDnetに切り替えたのか|EDINETとの役割分担
連載第1〜2回まではEDINETの一次情報を中心に整理してきましたが、「楽天証券の決算カレンダーで243社の決算が出ている日に、EDINETでは6社しか取れない」という現実に直面し、データソースの切り替えを決断しました。
| 項目 | EDINET(金融庁) | TDnet(東証) |
|---|---|---|
| 主な書類 | 有価証券報告書・四半期・半期報告書 | 決算短信・業績予想修正・配当予想・自社株買い・中計・M&A |
| 提出タイミング | 決算日から3ヶ月後 | 決算日から45日以内(速報) |
| 5月初旬の3月期決算 | 未提出(6月末) | 続々と提出中(ピーク) |
| 投資家の主戦場 | 補足調査用 | 速報・投資判断のメイン情報 |
これが、楽天証券などの「決算カレンダー」が示している”その週の決算”の正体。本連載は今回からTDnet主軸に切り替え、6月末に出揃う有価証券報告書(EDINET)は決算短信の答え合わせ・補足調査として併用していきます。
② 今週のカテゴリ別件数|決算短信302件+自社株買い123件
| カテゴリ | 件数 | 読み解き方 |
|---|---|---|
| 決算短信 | 302件 | 3月期決算企業の本決算が一気に提出 |
| 自社株買い | 123件 | 配当と並ぶ株主還元の二本柱、規模・対象期間の確認が必須 |
| 決算説明資料 | 107件 | 決算短信の補足、図表でビジュアル理解できる |
| 配当予想 | 86件 | 増配・減配・配当方針の変更が含まれる |
| 業績予想修正 | 72件 | 上方修正・下方修正・通期予実差異 |
| 中期経営計画 | 30件 | 3月期決算企業が新中計を一斉発表する週 |
| 資本政策(株式分割等) | 17件 | 投資単位金額の引き下げで個人投資家が買いやすく |
| M&A・組織再編 | 8件 | 構造変化のサイン、評価倍率見直しのきっかけ |
| 合計 | 745件 | 2営業日でこの規模、本決算ラッシュの威力 |
📈 個人投資家にとっての意味:3月期決算企業はGW明け第1週から本決算ラッシュ。中計発表30件・自社株買い123件が同時並行というのは「企業のお金の使い方の哲学」を1週間で30倍以上比較できるということ。配当一筋なのか、自社株買いシフトなのか、成長投資優先なのか——同じ業界の競合と並べて読むと、見えてくるものがあります。
③ 株主還元で動いた銘柄|大幅増配ラッシュ
6841 横河電機|配当58→78円の+34.5%大幅増配
プラント計装の世界的大手。今期は売上+7.5%、純利益+11.5%と着実な伸長に対し、配当を58円→78円(+34.5%)と大幅に積み増し。2025/3期28.9%だった配当性向が34.3%に引き上げられ、株主還元の姿勢が一段強まりました。
| 指標 | 2025/3期 | 2026/3期 | 伸び率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 562,404百万円 | 604,829百万円 | +7.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 52,123百万円 | 58,113百万円 | +11.5% |
| 年間配当 | 58円 | 78円 | +34.5% |
8052 椿本興業|連続増配+中計「ATOM2028」発表
機械・設備部品商社。売上+5.4%、純利益+7.1%、配当80→90円(+12.5%)と、業績の伸び以上に還元を強化。同時に新中計「ATOM2028」を発表し、3年で営業利益率5%→より高い水準への引き上げを掲げています。配当性向は32.9%、純資産配当率3.5%。
8012 長瀬産業|純利益+29.8%、配当+11.1%、4株分割で個人投資家を呼び込む
化学品の専門商社(ナガセケムテックス含む)。売上+2.9%、営業利益+14.5%、純利益+29.8%と利益面で大きく伸長。配当は90円→100円(+11.1%)に引き上げ、配当性向31.3%。さらに2026年4月1日付で1→4の株式分割を実施済みで、投資単位金額が引き下がり個人投資家が買いやすくなりました。
新中期経営計画「Walk the Talk 2028」も同時発表。「言ったことを実行する」というメッセージを社名に込めた、行動主義の経営宣言です。
7224 新明和工業|特装車大手の連続増配
ダンプ・タンクローリーなど特装車の国内最大手。売上+7.0%、営業利益+16.9%、経常+20.6%、純利益+28.5%と全方向で増益。配当も52円→56円(+7.7%)と着実に伸ばしました。配当推移は44→44→48→52→56円と4期連続の増配。
8282 ケーズホールディングス|中計2027上方修正&連続増配
家電量販大手。売上+2.9%、営業利益+23.0%、経常+18.0%、純利益+50.3%と利益が一段ジャンプアップ。配当44円→46円(+4.5%)、来期予想は48円とさらなる増配を織り込み済み。
注目は「中期経営計画2027」並びに『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』2年目終了時点進捗状況及び一部更新(上方修正)についてを同時開示したこと。中計の数値を**上方修正**できる企業は、計画の蓋然性が高く長期保有しやすい銘柄。
④ 業績サプライズ|利益V字回復のプライム銘柄
6976 太陽誘電|純利益+535.9%、コンデンサ大手のV字回復
積層セラミックコンデンサ(MLCC)の世界大手。スマホ・自動車・産業機器の電子化に欠かせない電子部品です。前期は半導体不況の影響で利益が落ち込みましたが、今期は売上+4.1%、営業利益+91.2%、経常+129.4%、純利益は実に+535.9%とV字回復。
配当は90円維持(前期の配当性向482%という異常値が、76%まで正常化)。新中期経営計画「中期経営計画2030」を同時発表。AI関連需要、車載電装化、データセンター投資が向こう数年の追い風です。
2802 味の素|当期利益+79.6%、IFRS基準でも好調
食品業界グローバル大手。IFRS基準で売上+3.5%、事業利益+13.7%、当期利益+79.6%と力強い決算。海外売上比率の高さが、円安と新興国の所得成長の追い風を受けています。
2025年4月1日付で1→2株式分割を実施済み。分割後ベースの年間配当は2025/3期80円→2026/3期48円ですが、分割考慮で実質「年96円相当」=前期比+20%の増配です。
8020 兼松|中堅総合商社の純利益+25.8%、株式分割で買いやすく
中堅総合商社(電子・デバイス、食料、鉄鋼、車両・航空など)。IFRS基準で収益+1.6%、営業利益+15.7%、当期利益+25.8%と好決算。2026年1月1日付で1→2株式分割を実施済みで、分割後の配当は中間57.5円+期末34.25円相当となっています。
4559 ゼリア新薬|【続報】増配維持だが経常利益はマイナスに転換
連載第2回でも取り上げた中堅製薬会社。今期は売上+2.1%、営業利益+1.4%、経常利益△14.0%、純利益△14.9%と、利益面でマイナス。それでも配当は47円→49円(+4.3%)と増配を維持。これは「業績の谷でも還元方針は崩さない」というメッセージ。
⑤ 中期経営計画|30社が新中計を一斉発表
3月期決算と同時に、30社が新中計を一斉発表。これは「次の3〜5年の経営の約束」をまとめて読める、年に一度の貴重なタイミングです。代表的な発表を3つ紹介します。
| 企業 | 中計名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 8282 ケーズHD | 中期経営計画2027(上方修正) | 2年目終了時点で計画上方修正、信頼性高い |
| 6976 太陽誘電 | 中期経営計画2030 | 5年スパン、AI関連需要を取り込む長期計画 |
| 8012 長瀬産業 | Walk the Talk 2028 | 「言ったことを実行する」行動主義の宣言 |
| 8052 椿本興業 | ATOM2028 | 機械商社の3カ年計画 |
| 7504 高速 | 中長期経営計画 2026-2035 | 10年単位の長期計画は珍しい |
| 9119 飯野海運 | Transformation for a Sustainable Future | 海運業の構造転換 |
| 5262 日本ヒューム | 新中期経営計画26-30 NEXT100 | 創業100年に向けた節目計画 |
📚 中計の読み方の3ステップ:(1)定量目標(売上・営業利益率・ROE・配当性向)が明示されているか確認、(2)計画期間と既存中計との連続性をチェック、(3)経営トップのメッセージから本気度を判定。新中計は「未来の数字」なので保証はないですが、3年〜5年後の競合比較で確実に効いてくる長期判断の材料になります。
⑥ 自社株買い|プライム主力が一斉に動く
自社株買い123件のうち、特に時価総額の大きいプライム主力企業の動きを抽出しました。
| コード | 企業名 | 概要 |
|---|---|---|
| 4901 | 富士フイルム | 取得状況および取得終了+消却。完全な還元実行 |
| 6857 | アドバンテスト | 半導体テスター世界大手、AI需要の追い風で取得継続 |
| 6841 | 横河電機 | +34.5%増配と同時に自己株式取得を決定(株主還元のダブル) |
| 6465 | ホシザキ | 業務用厨房機器大手 |
| 6925 | ウシオ電機 | 取得状況および取得終了 |
| 5108 | ブリヂストン | タイヤ世界大手 |
| 8729 | ソニーフィナンシャルG | 金融セクター |
| 2802 | 味の素 | 食品大手 |
| 5214 | 日本電気硝子 | ガラス大手 |
| 9301 | 三菱倉庫 | 物流 |
| 3549 | クスリのアオキHD | ドラッグストア |
⑦ 連載第1〜2回からの続報|EDINETベース銘柄の今
連載第1〜2回で取り上げた銘柄のうち、今週TDnetに登場した企業の動向を追跡。
- 4559 ゼリア新薬:連載第2回で「中堅製薬」として配当の安定性に注目。今週の本決算では経常△14.0%だが、配当は47→49円に増配維持。業績悪化中の還元継続パターン。
- 3399 山岡家:連載第2回で「ラーメンチェーン急成長」として紹介。今週は2027/1期4月度の月次売上速報を提出。月次提出企業は事業の進捗を毎月把握できる、地道な観察対象として優秀。
- 9166 GENDA:連載第2回で「2027年から配当開始予定」を紹介。今週は自己株式取得枠設定の訂正開示。修正の内容は確認が必要だが、株主還元方針の早期実装に向けた動きと読めます。
⑧ まとめ|TDnet本格運用元年の3つの教訓
① 速報のTDnet・詳細のEDINETの二段構え
5月初旬の本決算ラッシュはTDnetの決算短信が主戦場。EDINETの有価証券報告書は6月末以降の最終確定版として、「答え合わせ」と詳細調査に使う。連載はこの二段構えで運用していきます。
② 中計の上方修正は最強の信頼サイン
ケーズHDのように中計を上方修正できる企業は経営の蓋然性が高く、長期保有しやすい。連載第1回のCasaの下方修正と対比して見ると、「中計の進捗追跡」が長期投資の核心であることが鮮明に。
③ 派手な伸び率は5期トレンドで冷静に
太陽誘電の純利益+535.9%は前期の谷からの反転で生まれた数字。シリコンサイクルの底からのレバレッジは派手だが、5期分のトレンドで実力を見極めるのが初中級者の鉄則。
📈 ポイント:連載第3回でついに、“投資家にとって本当に役立つ週次決算まとめ”のフォーマットが立ち上がりました。今週の745件中で本記事が深掘りした11社(と中計7社・自社株買い11社)は、いずれも中長期で追う価値のあるウォッチリスト候補。来週の3月期決算ラッシュ第2週は、本連載のフォーマットがさらに進化していきます。
⑨ 来週予告|3月期決算ラッシュ第2週、銀行・自動車・商社の本番
来週(5/11〜5/15)は3月期決算ラッシュ第2週の本番。今週はGW明け2営業日のみで745件、来週は5営業日フル稼働で3,000〜4,000件規模の開示が見込まれます。
- 総合商社の本決算と還元方針:三菱・三井・住友・伊藤忠・丸紅の本決算が一斉。累進配当・自社株買い枠の動向に注目
- 銀行セクター:3メガ・地銀の本決算。資本コスト経営・PBR1倍超達成の進捗
- 自動車・電機・機械:北米関税・為替動向の業績影響、来期見通しの慎重度
本連載は今週からTDnetを主戦場に、毎週月曜のEDINET補足調査を組み合わせる体制で「自分で考える個人投資家」のためのウォッチリストを継続的に育てていきます。
📅 RECORD
最終更新日:2026年5月9日
初稿公開日:2026年5月9日
連載シリーズ:「今週の決算情報」第3回(TDnetベース運用初回)
📚 データ参照元
- TDnet(東京証券取引所 適時開示情報閲覧サービス):2026年5月7日〜5月8日提出の決算短信302件・自社株買い123件・決算説明資料107件・配当予想86件・業績予想修正72件・中期経営計画30件・資本政策17件・M&A 8件 = 合計745件
- 各企業の決算短信PDF(提出日: 2026年5月7日/5月8日)
- 業績数値・配当・中期経営計画等は決算短信本文より引用
- 本記事公開時点の最新情報を基に作成
📝 編集ノート(運営者より)
本記事は、35歳メーカーシステムエンジニアで投資歴7年の運営者「ちぷるそ」が、TDnetおよびEDINETの一次情報を直接読み解いて編集しています。NISA満額(月30万円)を継続中で、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と楽天・高配当株式・米国ファンド(楽天SCHD)の2銘柄構成で長期投資を実践中。日本株の個別銘柄は保有していませんが、決算分析を通じて「自分で考える投資家」を増やすことを目的にこの連載を続けています。本記事は投資推奨ではなく、判断材料の提供を目的としています。投資判断はご自身の責任で行ってください。事実誤りや疑問点に気づいた方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。



